太宰治 『道化の華』 「私が三つのとき、」…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『道化の華』

現代語化

「私が3つのとき、」
「ランプをひっくり返して、やけどしたんですって。ずいぶん、ひがんだものでございますのよ。小学校へ上がってた自分は、この傷、もっともっと大きかったんですの。学校の友達は私を、ホタル、ホタルって」
「そう呼ぶんです。私、その度に、きっと敵討ちしようと思いましたわ。ええ、本当そう思ったわ。偉くなろうと思いましたの」
「おかしいですのねえ。偉くなれるもんですか。眼鏡かけましょうかしら。眼鏡かけたら、この傷がちょっと隠れるんじゃないかしら」
「やめてよ。かえっておかしい」
「そのままでいいんだ。目立たないし。もう寝たらどうだ？明日は早いんだから」<ctrl99>

原文 (会話文抽出)

「私が三つのとき、」
「ランプをひつくりかへして、やけどしたんですつて。ずゐぶん、ひがんだものでございますのよ。小學校へあがつてゐたじぶんには、この傷、もつともつと大きかつたんですの。學校のお友だちは私を、ほたる、ほたる。」
「さう呼ぶんです。私、そのたんびに、きつとかたきを討たうと思ひましたわ。ええ、ほんたうにさう思つたわ。えらくならうと思ひましたの。」
「をかしいですのねえ。えらくなれるもんですか。眼鏡かけませうかしら。眼鏡かけたら、この傷がすこしかくれるんぢやないかしら。」
「よせよ。かへつてをかしい。」
「そのままでいいのだ。目立ちはしないよ。もう眠つたらどうだらう。あしたは早いのだよ。」

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