太宰治 『道化の華』 「さうなんでございますのよ。ずゐぶんですわ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『道化の華』

現代語化

「そうなんですわ。ずいぶんですよ。昨日だって、婦長室に看護婦を大勢集めて、かるたなんかして大騒ぎしてた癖に」
「そうだ。12時過ぎまでキャッキャ言ってたよ。ちょっとバカだな」
「自分がよくないことをしてるから、人のいいところがわからないんですわ。噂ですけど、婦長さんは院長さんの愛人なんですって」
「そうか。いいところがある」
「勲章が愛人を持つたのか。いいところがあるよ」
「本当、皆さん、罪のないことをおっしゃっては、笑っていらっしゃるのに、わからないのかしら。気にしないで、思いっきりお騒ぎになったほうがいいですよ。気にしないでください。今日一日なんですものねえ。本当に誰にも叱られたことのない、いい育ちの方ばかりなのに」
「婦長のところに行ってもダメだよ。よしよし。どうってことないじゃないか」
「正義派だ」
「泣き出しちゃった。自分の言葉に酔ってしまったんだよ。普段は大人びたことを言ってるけど、やっぱり女だな」
「変ってるよ」
「最初から俺、変ってると思ってたんだよ。おかしいなあ。泣いて飛び出そうとするんだから、驚いたよ。まさか婦長のところに行ったんじゃないだろうな」
「そんなことはないよ」
「婦長の肖像画か」
「どれどれ」
「女怪だね。傑作だよ。これ。似てるのか」
「そっくりだ。一度院長と一緒に、この病室にも来たことがあるんだ。うまいもんだなあ。鉛筆貸せよ」
「これにかこう角を生やすんだ。いよいよ似てきたな。婦長室のドアに貼ってやろうか」
「外に散歩に出ようよ」
「ポンチ絵の大家」

原文 (会話文抽出)

「さうなんでございますのよ。ずゐぶんですわ。ゆうべだつて、婦長室へ看護婦をおほぜいあつめて、歌留多なんかして大さわぎだつたくせに。」
「さうだ。十二時すぎまできやつきやつ言つてゐたよ。ちよつと馬鹿だな。」
「ご自分がよくないことをしてゐるから、ひとのよいところがわからないんだわ。噂ですけれど、婦長さんは院長さんのおめかけなんですつて。」
「さうか。いいところがある。」
「勳章がめかけを持つたか。いいところがあるよ。」
「ほんたうに、みなさん、罪のないことをおつしやつては、お笑ひになつていらつしやるのに、判らないのかしら。お氣になさらず、うんとおさわぎになつたはうが、ようございますわ。かまひませんとも。けふ一日ですものねえ。ほんたうに誰にだつてお叱られになつたことのない、よい育ちのかたばかりなのに。」
「婦長のとこへ行つたつて駄目だよ。よし給へ。なんでもないぢやないか。」
「正義派だ。」
「泣き出しちやつた。自分の言葉に醉つてしまつたんだよ。ふだんは大人くさいことを言つてゐても、やつぱり女だな。」
「變つてるよ。」
「はじめから僕、變つてると思つてゐたんだよ。をかしいなあ。泣いて飛び出さうとするんだから、おどろいたよ。まさか婦長のとこへ行つたんぢやないだらうな。」
「そんなことはないよ。」
「婦長の肖像畫か。」
「どれどれ。」
「女怪だね。けつさくだよ。これあ。似てゐるのか。」
「そつくりだ。いちど院長について、この病室へも來たことがあるんだ。うまいもんだなあ。鉛筆を貸せよ。」
「これへかう角を生やすのだ。いよいよ似て來たな。婦長室のドアへ貼つてやらうか。」
「そとへ散歩に出てみようよ。」
「ポンチ畫の大家。」


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