太宰治 『道化の華』 「電氣がくらいな。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『道化の華』

現代語化

「電気暗いな」
「うん。この病院は明るい電気つけさせないんだ。座らない?」
「ああ」
「どうやら、こっちだけはどうにか片がついた」
「ありがとう」
「俺はなんとも思ってないよ。でも、これから家帰るとまたうるさいんだ」
「俺もできることはするけど、お前からも親父にいい感じに手紙出した方がいい。お前ら、のんきそうだけど、でもめんどくさい事件だよ」
「出したくなかったら、出さなくていいよ。あさって、警察行くんだ。警察でも、今まではわざと取り調べを延ばしてくれてたんだ。今日は俺と飛騨が証人として取り調べられた。普段のお前の素行を聞かれたから、おとなしい方でしたって答えた。思想上で何か不審なことはなかったかって聞かれて、絶対ありませんって」
「女の人のことも聞かれた。全然知りませんって言っておいた。飛騨もだいたい同じことを聞かれたみたいだ。俺の答弁と一致したらしいよ。お前も、ありのまま言えればいい」
「要らないことは言わなくていい。聞かれたことだけをハッキリ答えるんだ」
「起訴されるのかな」
「わかんない。それはわかんない」
「どうせ4、5日は警察に留められると思うから、その準備して行け。あさっての朝、俺がここに迎えに来る。一緒に警察行くんだ」
「今回の事件は事件として、」
「お前も、ずっと将来のこと考えてみないといけないよ。家だって、そんなに金があるわけじゃないんだから。今年は、ひどい不作だよ。お前らに知らせたってなんにもならないだろうけど、うちの銀行も今危なくなってるし、大変なことだよ。お前は笑うかもしれないけど、芸術家とかどうでもいいから、一番に生活のこと考えなきゃいけないと思うな。まあ、これから生まれ変わったと思って、一発奮発してみろよ。俺は、もう帰ろう。飛騨も小菅も、俺の宿に泊めるようにした方がいい。ここで毎晩騒いでると、まずいことがある」
「俺の友達みんな、いいやつだろ?」
「うん。――小菅さんっていう方、」
「面白い方ですねえ」
「ああ。あれで、まだ若いんだよ。俺と3つ違いだから、22だ。俺の死んだ弟と同じ年だ。あいつ、俺の悪いところばっかり真似してる。飛騨はすごいよ。もう一人前だ。しっかりしてる」
「俺がこんなことやらかすたびに一生懸命で俺をいたわるんだ。俺たちに無理して調子合わせてんねん。他のことには強いのに俺らにだけオドオドするんだ。ダメだ」
「あの子のことを話してあげようか」

原文 (会話文抽出)

「電氣がくらいな。」
「うん。この病院ぢや明るい電氣をつけさせないのだ。坐らない?」
「ああ。」
「どうやら、こつちのはうだけは、片づいた。」
「ありがたう。」
「私はなんとも思つてゐないよ。だが、これから家へ歸るとまたうるさいのだ。」
「私も、できるだけのことはするが、お前からも親爺へよい工合ひに手紙を出したはうがいい。お前たちは、のんきさうだが、しかし、めんだうな事件だよ。」
「出したくないなら、出さなくていい。あさつて、警察へ行くんだ。警察でも、いままで、わざわざ取調べをのばして呉れてゐたのだ。けふは私と飛騨とが證人として取調べられた。ふだんのお前の素行をたづねられたから、おとなしいはうでしたと答へた。思想上になにか不審はなかつたか、と聞かれて、絶對にありません。」
「女のひとのことも聞かれた。全然知りません、と言つて置いた。飛騨もだいたい同じことを訊問されたさうだ。私の答辯と符合したらしいよ。お前も、ありのままを言へばいい。」
「要らないことは言はなくていい。聞かれたことだけをはつきり答へるのだ。」
「起訴されるのかな。」
「判らん。それは判らん。」
「どうせ四五日は警察へとめられると思ふから、その用意をして行け。あさつての朝、私はここへ迎へに來る。一緒に警察へ行くんだ。」
「こんどの事件は事件として、」
「お前も、ずつと將來のことを考へて見ないといけないよ。家にだつて、さうさう金があるわけでないからな。ことしは、ひどい不作だよ。お前に知らせたつてなんにもならぬだらうが、うちの銀行もいま危くなつてゐるし、たいへんな騷ぎだよ。お前は笑ふかも知れないが、藝術家でもなんでも、だいいちばんに生活のことを考へなければいけないと思ふな。まあ、これから生れ變つたつもりで、ひとふんぱつしてみるといい。私は、もう歸らう。飛騨も小菅も、私の旅籠へ泊めるやうにしたはうがいい。ここで毎晩さわいでゐては、まづいことがある。」
「僕の友だちはみんなよいだらう?」
「ええ。――小菅さんとおつしやるかた、」
「面白いかたですわねえ。」
「ああ。あれで、まだ若いのだよ。僕と三つちがふのだから、二十二だ。僕の死んだ弟と同じとしだ。あいつ、僕のわるいとこばかり眞似してゐやがる。飛騨はえらいのだ。もうひとりまへだよ。しつかりしてゐる。」
「僕がこんなことをやらかすたんびに一生懸命で僕をいたはるのだ。僕たちにむりして調子を合せてゐるのだよ。ほかのことにはつよいが僕たちにだけおどおどするのだ。だめだ。」
「あの女のことを話してあげようか。」


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