太宰治 『道化の華』 「やあ、」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『道化の華』

現代語化

「YO!」
「調子いいじゃん。さすがアーティストは仕事が捗るな」
「ダメよ。しばらく描かないと、頭ばっかり先走っちゃう」
「そうかもね。焦ってるんだろう。でも、それでいいんだ。アートに夢中だからだろ。そう思っとくべきだな――で、何描いてんの?」
「海を。空も海も真っ黒で、島だけ白い。描いてくうちに、やりすぎかなって思ってやめた。構図が初心者っぽくて」
「いいじゃん。偉大なアーティストはみんなどこか初心者っぽさがある。それでいいんだ。最初は素人からスタートして、プロになって、また素人に戻る。ロダンなんてまさにそう。いや、そうでもないか」
「絵は上手くなりたいな」
「絵も彫刻もまだもどかしいよ」
「そんな気もするな」
「出来れば詩を書きたいんだけど。詩は正直だから」
「うん。詩もいいね」
「でも、やっぱりつまんないかな」
「俺にはパトロンが向いてるかも。金稼いで、飛騨みたいないいアーティストたくさん集めて、可愛がってやるんだ。どう?アートってなんか恥ずかしくなってきた」
「悪くねえよ。それも立派な生き方だと思う。そういう人も必要だよね。まじで」

原文 (会話文抽出)

「やあ、」
「やつてるな。いいよ。藝術家は、やつぱり仕事をするのが、つよみなんだ。」
「駄目だよ。しばらく畫かないでゐると、頭ばかり先になつて。」
「さうかも知れんな。あせるからだ。しかし、それでいいんだよ。藝術に熱心だからなのだ。まあ、さう思ふんだな。――いつたい、どんなのを畫いたの?」
「海を畫いた。空と海がまつくろで、島だけが白いのだ。畫いてゐるうちに、きざな氣がして止した。趣向がだいいち素人くさいよ。」
「いいぢやないか。えらい藝術家は、みんなどこか素人くさい。それでよいんだ。はじめ素人で、それから玄人になつて、それからまた素人になる。またロダンを持ち出すが、あいつは素人のよさを覘つた男だ。いや、さうでもないかな。」
「僕は畫をよさうと思ふのだ。」
「畫は、まだるつこくていかんな。彫刻だつてさうだよ。」
「そんな氣持ちも判るな。」
「できれば、詩を書きたいのだ。詩は正直だからな。」
「うん。詩も、いいよ。」
「しかし、やつぱりつまらないかな。」
「僕にいちばんむくのはパトロンになることかも知れない。金をまうけて、飛騨みたいなよい藝術家をたくさん集めて、可愛がつてやるのだ。それは、どうだらう。藝術なんて、恥かしくなつた。」
「わるくないよ。それも立派な生活だと思ふな。そんなひともなくちやいけないね。じつさい。」


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