中島敦 『悟浄出世』 「我とはなんですか?」…

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青空文庫図書カード: 中島敦 『悟浄出世』

現代語化

「自分ってなんだ?」
「まず声を出してみろ。ブウって鳴くならお前は豚だ。ギャアって鳴くなら鵞鳥だ」
「自分で自分のことを説明しようとしなければ、自分を知ることは案外難しくない」
「目には全部が見えるけど、自分を見ることはできない。自分は結局、自分が知ることのできないものなんだ」
「自分はいつも自分だ。自分が今意識するようになる前、永遠にわたって自分がいた。(今は誰も覚えてないけど)それが今自分になったんだ。現在の意識がなくなる後も、永遠にわたって、自分はあるはずだ。それを今誰も想像できないし、その時に今の意識のことを忘れてるだろうけど」
「ずっと続く自分ってなんだ?それは過去の記憶のたまらないのか」
「思い出せないっていうのが、俺たちが毎日してることなんだ。忘れたことを忘れてるからいろんなことが新しく感じるんだけど、実は、全部を徹底的に忘れるからなんだ。昨日のことどころか、ほんの一瞬前、その時の感覚や気持ちも全部次の瞬間には忘れてる。そのほんの少しの、ぼんやりしたコピーみたいなのが残るだけだ。悟浄、今の瞬間ってのは、なんとすごいもんじゃないか」

原文 (会話文抽出)

「我とはなんですか?」
「まず吼えてみろ。ブウと鳴くようならお前は豚じゃ。ギャアと鳴くようなら鵝鳥じゃ」
「自己とはなんぞやとむりに言い表わそうとさえしなければ、自己を知るのは比較的困難ではない」
「眼は一切を見るが、みずからを見ることができない。我とは所詮、我の知る能わざるものだ」
「我はいつも我だ。我の現在の意識の生ずる以前の・無限の時を通じて我といっていたものがあった。(それを誰も今は、記憶していないが)それがつまり今の我になったのだ。現在の我の意識が亡びたのちの無限の時を通じて、また、我というものがあるだろう。それを今、誰も予見することができず、またそのときになれば、現在の我の意識のことを全然忘れているに違いないが」
「一つの継続した我とはなんだ? それは記憶の影の堆積だよ」
「記憶の喪失ということが、俺たちの毎日していることの全部だ。忘れてしまっていることを忘れてしまっているゆえ、いろんなことが新しく感じられるんだが、実は、あれは、俺たちが何もかも徹底的に忘れちまうからのことなんだ。昨日のことどころか、一瞬間前のことをも、つまりそのときの知覚、そのときの感情をも何もかも次の瞬間には忘れちまってるんだ。それらの、ほんの僅か一部の、朧げな複製があとに残るにすぎないんだ。だから、悟浄よ、現在の瞬間てやつは、なんと、たいしたものじゃないか」

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