寺田寅彦 『自由画稿』 「プリンセス」…

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青空文庫図書カード: 寺田寅彦 『自由画稿』

現代語化

「お姫様」
「兵士の亡骸が運ばれてきても、お姫様は気絶も泣いたりもしなかったので、侍女たちは心配して、これではお姫様の命が危ないと話しました。すると90歳のおばあやが兵士の赤ちゃんを連れてきて、そっとお姫様の膝に座らせました。すると、夏の大雨のように涙があふれました」
「自分が若くて妻を亡くした時も、全然泣けませんでした。ただとても張り詰めた気持ちでした。親戚の女性たちが自由に泣けるのが不思議に思えました。亡骸を郊外の山腹にある先祖代々の墓地に葬った後、新しいお墓の前に仮の祭壇を作り、神主さんが簡単な祝詞をあげました。私は2歳の遺児を膝に乗せて腰掛け、祝詞を聞いていたのですが、それまで吹き荒れていた風が突然止んだように世の中が静かになり、とてつもなくきれいになったような気がしました。山の木々も墓地から見下ろせる麓の田畑も、ちょうど夕暮れの空の光に照らされて、いつも見慣れた景色が、見たことのないような特別な美しさで輝いているように感じられました。そんな空のもとで、亡くなったおかあさんのいない赤ちゃんを抱いてうつむいている自分自身を客観的に眺めた瞬間、不意に熱い涙がわき出てくるように流れてきました」

原文 (会話文抽出)

「プリンセス」
「戦士の亡骸が運び込まれたのを見ても彼女は気絶もせず泣きもしなかったので、侍女たちは、これでは公主の命が危ういと言った、その時九十歳の老乳母が戦士の子を連れて来てそっと彼女のひざに抱きのせた、すると、夏の夕立のように涙が降って来た」
「自分が若くて妻をうしなったときも、ちっとも涙なんか出なかった。ただ非常に緊張したような気持ちであった。親戚の婦人たちが自由自在に泣けるのが不思議な気がした。遺骸を郊外山腹にある先祖代々の墓地に葬った後、なまなましい土饅頭の前に仮の祭壇をしつらえ神官が簡単なのりとをあげた。自分は二歳になる遺児をひざにのせたまま腰をかけてそののりとを聞いていたときに、今まで吹き荒れていた風が突然ないだかのように世の中が静寂になりそうして異常に美しくなったような気がした。山の木立ちも墓地から見おろされるふもとの田園もおりから夕暮れの空の光に照らされて、いつも見慣れた景色がかつて見たことのない異様な美しさに輝くような気がした。そうしてそのような空の光の下に無心の母なき子を抱いてうつ向いている自分自身の姿をはっきり客観した、その瞬間に思いもかけず熱い涙がわくように流れ出した。」

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