GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 黒木舜平(太宰治) 『断崖の錯覚』
現代語化
「でも、アタシ、汚れてるねん。」
「わからんわぁ。だから言ってるやん。体は関係ないんや。心やねん、心やねん。」
「あら!」
「いや、ええねん。アタシ、あんたに自信つけてあげたいだけやねん。これは傑作や。世に出してない傑作や。でも、1人の人間に自信つけて助けてやるんやったら、どんな傑作でも喜んで燃やしちゃうわ。それがほんまの傑作や。アタシのためにこの小説書いたんや。でもこれがあんたを救えなくて苦しめたら、アタシ、これを破るしかないわ。これを破って、あんたに自信つけてあげたいねん。助けてあげたいねん。」
「わかったわ。わかったわ。」
「アタシ、泊まるわ。泊めてや。もっともっと話聞かせて。アタシ、泊まるわ。気にせんといて。気にせんといて。」
原文 (会話文抽出)
「いや、そんなことはない。君の方が美しい。顔の美しさは心の美しさだ。心の美しいひとは必ず美人だ。女の美容術の第一課は、心のたんれんだ。僕はそう思うよ。」
「でも、私、よごれているのよ。」
「判らんなあ。だから。言ってるじゃないか。からだは問題でないんだ。心だよ、心だよ。」
「あら!」
「いや、いいんだ。僕は君に自信をつけてやりたいのだ。これは傑作だ。知られざる傑作だ。けれども、ひとりの人間に自信をつけて救ってやるためには、どんな傑作でもよろこんで火中にわが身を投ずる。それが、ほんとうの傑作だ。僕は君ひとりのためにこの小説を書いたのだ。しかしこれが君を救わずにかえって苦しめたとすれば、僕は、これを破るほかはない。これを破ることで、君に自信をつけてやりたい。君を救ってやりたい。」
「判ったわよ。判ったわよ。」
「私、泊るわ。ねえ、泊らしてよ。もっともっと。話を聞かしてよ。私、泊るわ。かまうものか。かまうものか。」