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青空文庫図書カード: 太宰治 『津軽』

現代語化

「あなたが、こっちは来るってことを、母はもう知ってて、ぜひ会いたいから弘前へ寄ってくれって電話がありましたよ。」
「あ、弘前には、東京へ帰る時にちょっと立ち寄ろうと思ってるから、病院も必ず行きます。」
「明日は小泊の、たけに会いに行くんだそうです。」
「たけに。」
「それはいいことです。たけも、どれだけ喜ぶか、わかりません。」
「でも、会えるかどうか。」
「小泊行きのバスは、1日1本とか聞いてたんですが、」
「明日の一番の電車でここを出発しないと、中里からのバスに間に合いませんよ。大事な日に、寝坊しないように。」

原文 (会話文抽出)

「あなたが、こつちへ来てゐるといふ事を、母はもう知つて、ぜひ逢ひたいから弘前へ寄こしてくれつて電話がありましたよ。」
「あ、弘前には、東京へ帰る時に、ちよつと立ち寄らうと思つてゐますから、病院にもきつと行きます。」
「あすは小泊の、たけに逢ひに行くんださうです。」
「たけに。」
「それは、いい事です。たけも、なんぼう、よろこぶか、わかりません。」
「でも、逢へるかどうか。」
「小泊行きのバスは、一日に一回とか聞いてゐましたけど、」
「あしたの一番の汽車でここをお立ちにならないと、中里からのバスに間に合ひませんよ。大事な日に、朝寝坊をなさらないやうに。」

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