太宰治『惜別』「いや、君はべつだ。君は、決して田舎者じゃ…

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青空文庫図書カード: 太宰治『惜別』

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「いや、お前は違う。お前は田舎者じゃねーよ。お前は、そうだなあ。」
「ある意味じゃ、都会人と言ってもいいかもな。」
「そうだよ、お前は中国人だ！そうなんだよ、お前。」
「だから、同じ東北人なのに矢島たちからも煙たがられてるんだよ。」
「つまり、お前の今の立場は周さんと同じなんだ。俺はそうは思わないけど、お前の顔って中国人っぽいらしいぜ、クラスでは。お前、周さんとばっかりつるんでるからダメなんだよ。お前の名前、田中卓ってのをさ、クラスの奴らは陰で「田さん卓」って呼んでるんだぜ。知ってた？」

原文 (会話文抽出)

「いや、君はべつだ。君は、決して田舎者じゃない。君は、そうだね、」
「或る意味では、むしろ、都会人とでも言いたいのであるが、」
「そうだ、君は支那人だ！　そうなんだよ、君。」
「君は、だから、同じ東北人の矢島たちからも敬遠されているのだ。」
「つまり君の現在の立場は、周さんと同一なのだ。僕は決してそうは思わないが、君の顔が支那人に似ているというのがクラスの定評なのだ。君は、どうも、周さんとばかり附合っているからいけない。君の名の田中卓を、クラスの者たちは陰で、田中卓と呼んでいるのだが、君は知るまい。どうだ君は田さんという名前なんだぜ。不愉快だろう？」

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太宰治 『惜別』 「いや、君はべつだ。君は、決して田舎者じゃ…

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