太宰治 『惜別』 「あなたは、お国の言葉よりも、独逸語のほう…

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現代語化

「あなたは、お国の言葉よりも、ドイツ語の方がお得意のようですね。」
「そうではありません。」
「僕の日本語が、おわかりにならぬかと思って。」
「いや、いや。」
「あなたの日本語は、たいへん上手です。どうか、日本語だけで話してください。僕は、まだドイツ語は、どうも。」
「やめましょう。」
「僕は、馬鹿なことをばかり言いました。しかし、ドイツ語は、これからも、うんと勉強しようと思っています。日本の医学の先駆者、杉田玄白も、まず語学の勉強から始めたようです。藤野先生も最初の授業の時に、杉田玄白の蘭学の苦心を教えてくれましたが、あなたは、あの時、――」
「欠席しました。」
「そうでしょう。どうもあの時、あなたの顔は見かけなかった。僕は、本当は、あなたを入学式の日から知っているのです。あなたは、入学式の時、制帽をかぶって来ませんでしたね。」
「ええ、何だかどうも、角帽が恥ずかしくて。」
「きっと、そうだろうと思っていました。あの日、制帽をかぶって来ない新入生が二人いました。ひとりは、あなたで、もうひとりは、僕でした。」
「そうでしたか。」
「それでは、あなたも、やはり、――」
「そうです。恥ずかしかったのです。この帽子は、音楽隊の帽子に似ていますからね。それから、僕は、学校へ出るたびに、あなたの姿を捜していました。今朝、船で一緒になって、うれしかったのです。しかし、あなたは僕を避けていました。船から降りたら、もういなくなっていました。でも、やっぱり、ここで逢いました。」
「風が、寒くなりましたね。下へ降りましょうか。」
「そうね。」

原文 (会話文抽出)

「あなたは、お国の言葉よりも、独逸語のほうがお得意のようですね。」
「そうではありません。」
「僕の日本語が、おわかりにならぬかと思って。」
「いや、いや。」
「あなたの日本語は、たいへん上手です。どうか、日本語だけで話して下さい。僕は、まだ独逸語は、どうも。」
「やめましょう。」
「僕は、馬鹿な事ばかり言いました。しかし、独逸語は、これからも、うんと勉強しようと思っています。日本の医学の先駆者、杉田玄白も、まず語学の勉強からはじめたようです。藤野先生も最初の授業の時に、杉田玄白の蘭学の苦心を教えてくれましたが、あなたは、あの時、――」
「欠席しました。」
「そうでしょう。どうもあの時、あなたの顔は見かけなかった。僕は、本当は、あなたを入学式の日から知っているのです。あなたは、入学式の時、制帽をかぶって来ませんでしたね。」
「ええ、何だかどうも、角帽が恥かしくて。」
「きっと、そうだろうと思っていました。あの日、制帽をかぶって来ない新入生が二人いました。ひとりは、あなたで、もうひとりは、僕でした。」
「そうでしたか。」
「それでは、あなたも、やはり、――」
「そうです。恥かしかったのです。この帽子は、音楽隊の帽子に似ていますからね。それから、僕は、学校へ出るたびに、あなたの姿を捜していました。けさ、船で一緒になって、うれしかったのです。しかし、あなたは僕を避けていました。船から降りたら、もういなくなっていました。でも、やっぱり、ここで逢いました。」
「風が、寒くなりましたね。下へ降りましょうか。」
「そうね。」

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