太宰治 『清貧譚』 「お前のおかげで、私もたうとう髪結ひの亭主…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『清貧譚』

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「お前のおかげで、私もとうとう髪結いの亭主みたいになってしまった。女房のおかげで、家が豊かになるというのは男として最大の不名誉なのだ。私の三十年の清貧も、お前たちのせいでめちゃくちゃにされてしまった。」
「私が悪かったのかもしれません。私は、ただ、あなたの御恩にお報いしたくて、いろいろ心を砕いて今まで取り計らってきたのですが、あなたが、それほど深く清貧に志しておられるとは存じませんでした。では、この家の道具も、私の新築の家も、みんなすぐ売却するようにしましょう。そのお金を、あなたがお好きなように使っていってください。」
「ばかなことを言っては、いけない。私ともあろうものが、そんな不浄なお金を受け取るとでも思うか。」
「では、どうしたら、いいのでしょうか。」
「三郎だって、あなたに御恩報じをしようと思って、毎日、菊作りに励んで、あちこちのお屋敷にせっせと苗をお届けしてはお金を稼いでいます。どうしたら、いいのでしょうか。あなたと私たちとは、まるで考え方が、逆なんですもの。」
「別れるより他はない。」
「清いものは清く、濁ったものは濁ったまま暮らしていくより他はない。私には、人にかれこれ命令する権利はありません。私がこの家を出ましょう。明日から、私はあの庭の隅に小屋を作って、そこで清貧を楽しみながら寝起きすることにします。」

原文 (会話文抽出)

「お前のおかげで、私もたうとう髪結ひの亭主みたいになつてしまつた。女房のおかげで、家が豊かになるといふ事は男子として最大の不名誉なのだ。私の三十年の清貧も、お前たちの為に滅茶滅茶にされてしまつた。」
「私が悪かつたのかも知れません。私は、ただ、あなたの御情にお報いしたくて、いろいろ心をくだいて今まで取計つて来たのですが、あなたが、それほど深く清貧に志して居られるとは存じ寄りませんでした。では、この家の道具も、私の新築の家も、みんなすぐ売り払ふやうにしませう。そのお金を、あなたがお好きなやうに使つてしまつて下さい。」
「ばかな事を言つては、いけない。私ともあらうものが、そんな不浄なお金を受け取ると思ふか。」
「では、どうしたら、いいのでせう。」
「三郎だつて、あなたに御恩報じをしようと思つて、毎日、菊作りに精出して、はうばうのお屋敷にせつせと苗をおとどけしてはお金をまうけてゐるのです。どうしたら、いいのでせう。あなたと私たちとは、まるで考へかたが、あべこべなんですもの。」
「わかれるより他は無い。」
「清い者は清く、濁れる者は濁つたままで暮して行くより他は無い。私には、人にかれこれ命令する権利は無い。私がこの家を出て行きませう。あしたから、私はあの庭の隅に小屋を作つて、そこで清貧を楽しみながら寝起きする事に致します。」

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