太宰治 『新釈諸国噺』 「利左だ、間違いない。」…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『新釈諸国噺』

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「利左だ、間違いない。」
「あいつの右肩をちょっと上げて歩くクセは、昔から利左のクセで、それをまた小粋だと言って、俺にも右肩を上げて歩けってうるさく勧める女がいて困ったことがあった。利左に違いない。それ、呼び止めろ。」
「利左、お前はひどいよ。吉州には、俺も少し惚れてたけど、何もお前、そんな、俺はお前を恨みに思ったりなんかしてねえよ。黙って姿を消すなんて、水くさいじゃないか。」
「そうよ、そうよ。どんなつらい事情があったって、一言くらい俺たちに挨拶して行くのが本当だぞ。困ったことが起きた時には、お互い様さ。茶屋でお酒飲んで騒ぐばかりが友達じゃない。見れば、ひどい格好で、まあ、これがあの月夜の利左かい。俺たちにたった一言でも知らせてくれたら、こんなことにはならなかったのに、ぼうふら売りとは洒落が過ぎらあ。」
「利左、でも、会えてよかった。どこに行ったかと心配してたんだ。お前がいなくなったら、淋しくてなあ。上方の遊びもつまらなくなって、こうやって江戸へ出て来たけど、お前と一緒でないと、どこの遊びも面白くない。ここで会えたのは百年目さ。どうだい、これから、俺たちと一緒に上方へ帰って、また昔のように四人で派手に遊ぼうじゃないか。お金のことは心配するな。口はばったいけど、俺たち三人がついてる。お前の一生は保証した。」
「何を言ってるだよ。人の面倒なんて見られないよ。わざわざこの利左をバカにするために上方から来たのか。ご苦労なこった。俺は、これが好きでやってるんだ。構わないでくれ。遊びの果ては皆こんなものだ。ふん。そのうちお前たちだって、どうなるかわかったもんじゃない。一生保証するなんて笑わせやがる。でもまあ昔の仲だから江戸の茶碗酒でも一杯おごってやろうか。利左は落ちぶれてもお前たちのごちそうにはならないよ。お酒が飲みたかったらついてこい。あはは。」
「親父さん、これくらいある。昔の友達におごってやるんだ。茶碗で四人前ね。」

原文 (会話文抽出)

「利左だ、間違いない。」
「あの右肩をちょっと上げて歩く癖は、むかしから利左の癖で、あれがまた小粋だと言って、わしにも右肩を上げて歩けとうるさくすすめる女があって閉口した事がある。利左に違いない。それ、呼びとめろ。」
「利左、お前はひどい。吉州には、わしも少し惚れていたが、何もお前、そんな、わしはお前を恨みに思ったりなんかしてやしないよ。黙って姿を消すなんて、水くさいじゃないか。」
「そうよ、そうよ。どんなつらい事情があったって、一言くらいわしたちに挨拶して行くのが本当だぞ。困った事が起った時には、お互い様さ。茶屋酒のんで騒ぐばかりが友達じゃない。見れば、ひでえ身なりで、まあ、これがあの月夜の利左かい。わしたちにたった一言でも知らせてくれたら、こんな事になりはしなかったのに、ぼうふら売りとは洒落が過ぎらあ。」
「利左、でも、逢えてよかった。どこへ行ったかと心配していたのだ。お前がいなくなったら、淋しくてなあ。上方の遊びもつまらなくなって、こうして江戸へ出て来たが、お前と一緒でないと、どこの遊びも面白くない。ここで逢うたが百年目さ。どうだい、これから、わしたちと一緒に上方へ帰って、また昔のように四人で派手に遊ぼうじゃないか。お金の事や何かは心配するな。口はばったいが、わしたち三人が附いている。お前の一生は引受けた。」
「何を言っていやがる。人の世話など出来る面かよ。わざわざこの利左をなぶりに上方からやって来たのか。御苦労な事だ。こっちは、これが好きでやっているのさ。かまわないでくれ。遊びの果は皆こんなものだ。ふん。いまにお前たちだって、どんな事になるかわかったものじゃない。一生引受けたは笑わせやがる。でもまあ昔の馴染甲斐に江戸の茶碗酒でも一ぱい振舞ってやろうか。利左は落ぶれてもお前たちのごちそうにはならんよ。酒を飲みたかったら附いて来い。あはは。」
「おやじ、これだけある。昔の朋輩におごってやるんだ。茶碗で四はい。」

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