太宰治 『新釈諸国噺』 「水かさ刻一刻とつのる様子なれば、きょうは…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『新釈諸国噺』

現代語化

「水かさがどんどん増えてるから、今日はこの金谷って宿場町に泊まるよ。」
「へー、これが有名な大井川か。淀川の半分もないじゃん。俺の地元の猪名川とか武庫川よりちっさいじゃん。ねぇタコ。こんなちっさい川が渡れないなんて、式部もボケたのかな?」
「たしかに、」
「俺は地元の猪名川を子供の頃から毎日馬で渡ってたから、こんな小さい川はいくら水かさが増えても全然怖くないよ。でも、生まれつき水癲癇っていう病気があるんだって。どんなに武芸が達者でも、この水を見ると怖くて体が震えるっていう変な病気で、しかも親から子に遺伝するらしいんだよね。」
「変わった病気があるもんだな。まさか式部は、その水癲癇って病気じゃないよね? タコ、俺ら二人でこの濁流に馬を進めて、宇治川先陣の佐々木と梶原みたいに競争して向こう岸に渡ってみせるか? そうすればビビってる式部とか家来たちも仕方なく後からついてくるだろ。なんとしても今日中に、この大井川を渡って島田の宿に着かないと、西国の武士としての沽券にかかわるぜ。タコ、ついてこい。」

原文 (会話文抽出)

「水かさ刻一刻とつのる様子なれば、きょうはこの金谷の宿に一泊。」
「なんだ、これがあの有名な大井川か。淀川の半分も無いじゃないか。国元の猪名川よりも武庫川よりも小さいじゃないか。のう、蛸。これしきの川が渡れぬなんて、式部も耄碌したようだ。」
「いかにも、」
「私などは国元の猪名川を幼少の頃より毎日のように馬で渡ってなれて居りますので、こんな小さい川が、たといどんなに水を増してもおそろしいとは思いませぬが、しかし、生れつき水癲癇と申して、どのように弓馬の武芸に達していても、この水を見るとおそろしくぶるぶる震えるという奇病があって、しかもこれは親から子へ遺伝するものだそうで。」
「奇妙な病気もあるものだ。まさか式部は、その水癲癇とやらいう病気でもあるまいが、どうだ、蛸め、われら二人抜け駈けてこの濁流に駒をすすめ、かの宇治川先陣、佐々木と梶原の如く、相競って共に向う岸に渡って見せたら、臆病の式部はじめ供の者たちも仕方なく後からついて来るだろう。なんとしてもきょうのうちに、この大井川を渡って島田の宿に着かなければ、西国武士の名折れだぞ。蛸め、つづけ。」

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