太宰治 『新釈諸国噺』 「こうして、てくてく歩いているのも気のきか…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『新釈諸国噺』

現代語化

「歩いてくのもダリーな話じゃねえか。」
「やっぱり馬の方がいいっすか?」
「馬も悪かねえけど、一長一短っしょ。」
「ホントに、」
「鳥みたいに空飛べたらいいのにって思うことあるよね。」
「アホなこと言ってんじゃねえよ。」
「空飛ぶ必要はないけど、」
「空飛ぶ必要はないけど、」ってまた繰り返して、「寝ながら歩けねえもんかね。」
「それは無理っしょ。」
「馬の上なら寝ながら歩けるけど。」
「うん、確かに。」
「でもあれは野暮だよな。目が覚めてここどこって聞いても、馬は答えてくれねえしな。」
「うまいこと言うな。」
「お前も野暮だな。気ぃ利かねえよ。」
「は?」
「見りゃわかるだろ。もう歩けねえんだよ。俺、こんなにデブだから股擦れしちゃってさ、人に言えない苦労して歩いてるんだよ。見りゃわかるだろが。」
「肩貸すから。」
「いいよ。」
「恐縮です。俺、森岡丹後の息子なんだぜ。お前みたいな年下のやつに肩貸してもらうなんて、もし国にバレたら、親父や兄貴の面汚しになっちまうよ。お前ら親子は組んで森岡の家をバカにしてんのか?」
「式部、」
「タコにも駕籠を用意しろ。」
「は、かしこまりました。」

原文 (会話文抽出)

「こうして、てくてく歩いているのも気のきかない話じゃないか。」
「やっぱり、馬のほうがいいでしょうか。」
「なに、馬?」
「馬も悪くはないが、しかし、まあ一長一短というところだろうな。」
「本当に、」
「人間も鳥のように空を飛ぶ事が出来たらいいと思う事がありますね。」
「馬鹿な事を言っている。」
「空を飛ぶ必要はないが、」
「空を飛ぶ必要はないが、」とまた繰返して言い、「眠りながら歩く、という事は出来ないものかね。」
「それは、むずかしいでしょうね。」
「馬の上なら、眠りながら歩くという事も出来ますけれど。」
「うん、あれは。」
「あれは、また、野暮なものだ。眼が覚めて、ここはどこか、と聞いても、馬は答えてくれないからね。」
「うまい事をおっしゃる。」
「お前もまた、野暮な男だ。思いやりというものがない。」
「はあ?」
「見ればわかるじゃないか。おれはもう、歩けなくなっているのだ。おれはこんなに太っているから股ずれが出来て、人に知られぬ苦労をして歩いているのだ。見れば、わかりそうなものだ。」
「肩を貸してやれ。」
「はい。」
「ごめんこうむる。こう見えても森岡丹後の子だ。お前のような年少の者の肩にしなだれかかって峠を越えたという風聞がもし国元に達したならば、父や兄たちの面目が丸つぶれじゃないか。お前たち親子はぐるになって、森岡の一家を嘲弄する気なのであろう。」
「式部、」
「蛸にも駕籠をやれ。」
「は、ただいま。」

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