太宰治 『新釈諸国噺』 「鞠、死のう。」…

青空文庫現代語化 Home書名リスト太宰治 『新釈諸国噺』

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。 正しく現代語化されていない可能性もありますので、必ず原文をご確認ください。


青空文庫図書カード: 太宰治 『新釈諸国噺』

現代語化

「マリ、死のう」
「わかりました」
「待って、待てよ!」
「ああ、面倒なことになった。よし、こうなったら、人魚云々の議論なんてどうでもいい。俺は怒った。本気で怒った。怒った俺には理屈も何もない。道理に反してようが何だろうが、そんなことは関係ない。人魚なんてどうでもいい。そんなものはあったって無くたって同じだ。今はただ憎い奴を真っ二つに切り捨てるまでだ。おい、漁師、馬を貸せ。この2人の娘が乗るんだ。早く見つけてこい!」
「その泣き顔が気に入らない。相手が誰かわからないのか。これからすぐに馬で城下に戻って、百右衛門の屋敷に飛び込んで首を取って、金内殿に差し出さないと武士の娘とは呼べないぞ。泣くな!」
「百右衛門殿というのは」
「あの青崎、百右衛門殿のことですか」
「そうよ、あいつに決まってる」
「心当たりがあります」
「そういえばあの青崎百右衛門殿は、いい歳をして娘さんに惚れて、しつこく縁談を申し入れていて、娘さんは、あんな鷲鼻の相手に嫁ぐくらいなら死んだほうがいいと言っていて、それで、旦那さんも、――」
「そうか、それで事情がはっきりした。あいつ、一生独身主義だの、女嫌いだのと偉そうに言ってるくせに、実は、なあんだ、振られた男じゃないか。ダサい奴だな。叶わない恋の仕返しに金内殿をいじめるなんて、憎たらしくて笑える!」

原文 (会話文抽出)

「鞠、死のう。」
「はい。」
「待て、待てえ!」
「えい、つまらない事になった。ようし、こうなったら、人魚の論もくそも無い。武蔵は怒った。本当に怒った。怒った時の武蔵には理窟も何も無いのだ。道理にはずれていようが何であろうが、そんな事はかまわない。人魚なんて問題じゃない。そんなものはあったって無くったって同じ事だ。いまはただ憎い奴を一刀両断に切り捨てるまでだ。こら、漁師、馬を貸せ。この二人の娘さんが乗るのだ。早く捜して来い!」
「その泣き顔が気に食わぬ。かたきのいるのが、わからんか。これからすぐ馬で城下に引返し、百右衛門の屋敷に躍り込み、首級を挙げて、金内殿にお見せしないと武士の娘とは言わせぬぞ。めそめそするな!」
「百右衛門殿というと、」
「あの青崎、百右衛門殿の事でしょうか。」
「そうよ、あいつにきまっている。」
「思い当る事がございます。」
「かねてあの青崎百右衛門殿は、いいとしをしながらお嬢様に懸想して、うるさく縁組を申し入れ、お嬢様は、あのような鷲鼻のお嫁になるくらいなら死んだほうがいいとおっしゃるし、それで、旦那様も、――」
「そうか、それで事情が、はっきりわかった。きゃつめ、一生独身主義だの、女ぎらいだのと抜かしていながら、蔭では、なあんだ、振られた男じゃないか、だらしがない。いよいよ見下げ果てたやつだ。かなわぬ恋の仕返しに金内殿をいじめるとは、憎さが余って笑止千万!」

青空文庫現代語化 Home書名リスト太宰治 『新釈諸国噺』


青空文庫現代語化 Home リスト