太宰治 『新釈諸国噺』 「桑盛様の御総領ならば、私のほうでも不足は…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『新釈諸国噺』

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「桑盛様の御嫡子なら、こちらとしても不足はありませんが、ひとつ桑盛様のご宗旨をお聞かせください」
「ええと、それは」
「はっきりはわかりませんが、浄土宗だったと思います」
「それならば、お断りします」
「我が家は代々法華宗で、特に私の代になってから、深く日蓮様に帰依仕り、朝夕『南無妙法蓮華経』のお題目を怠らず、娘にもそう教えてありますので、今さら他宗へ嫁がせるわけにはいきません。あなたも縁談の仲介をするおつもりなら、それくらいのことは調べてから来てください」
「いや、あの、私は」
「我が家は代々の法華宗の日蓮宗で、朝夕、『南無妙法蓮華経』と唱えるのですよ」
「何を言っているんですか。あなたに嫁をやるわけじゃないでしょう。桑盛様が浄土宗なら、いくらお金があっても、その御嫡子がどんなに賢くてハンサムでも、私は反対です。日蓮様に申し訳が立ちません。あんなおどろおどろしい浄土宗のどこがいいんですか。よくもこの代々の法華宗の家に、娘をくださいなんて申し込みましたね。あなたの顔を見るだけで胸が悪くなります。お帰りください」

原文 (会話文抽出)

「桑盛様の御総領ならば、私のほうでも不足はございませんが、時に、桑盛さまの御宗旨は?」
「ええと、それは、」
「はっきりは、わかりませぬが、たしか浄土宗で。」
「それならば、お断り申します。」
「私の家では代々の法華宗で、殊にも私の代になりましてから、深く日蓮様に帰依仕って、朝夕南無妙法蓮華経のお題目を怠らず、娘にもそのように仕込んでありますので、いまさら他宗へ嫁にやるわけには行きません。あなたも縁談の橋渡しをしようというほどの男なら、それくらいの事を調べてからおいでになったらどうです。」
「いや、あの、私は、」
「私は代々の法華宗の日蓮様で、朝夕、南無妙法蓮華経と。」
「何を言っているのです。あなたに嫁をやるわけじゃあるまいし、桑盛様が浄土宗ならば、いかほど金銀を積んでも、またその御総領が御発明で男振りがよくっても、私は、いやと申します。日蓮様に相すみません。あんな陰気くさい浄土宗など、どこがいいのです。よくもこの代々の法華宗の家へ、娘がほしいなんて申込めたものだ。あなたの顔を見てさえ胸くそが悪い。お帰り下さい。」

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