太宰治 『新釈諸国噺』 「才兵衛や、まあここへお坐り。まあたいへん…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『新釈諸国噺』

現代語化

「才兵衛や、まあこっちにお座り。あら、ヒゲが伸びてるじゃないか。剃ったらどうだい。髪もこんなにボサボサで、どれ、ちょっと撫でつけてあげましょう」
「構わないでください。これは角力の乱れ髪と言って、粋なものなんです」
「あら、そうかい。でも粋って言葉を知ってるだけ立派じゃないか。お前は今年、いくつだい」
「知ってるくせに」
「19だったね」
「私がこの家に嫁いだのは、お父さんが19、お母さんが15の時でしたが、お前のお父さんったら、その前から遊び呆けててねえ、16の時から茶屋酒の味を覚えたとやらで、着物の着こなしでも何でも、それはそれは粋でねえ、私と一緒になってからも、しょっちゅう上方へ行って、いい女をたくさん作ったらしくて、今はあんな、どっちを向いてるのか分からないような変な顔だけど、若いときは、それなりに綺麗な顔で、ちょっとうつむいてる時の顔なんか、今の前とそっくりなのよ。お前も、お父さんに似てまつげが長いから、うつむいた時の顔に哀愁があって、きっと女には好かれますよ。上方へ行って島原とかの美人さんを泣かせるなんてのは、男に生まれて何よりの幸せでしょう」
「なんだつまらない。女を泣かせるには殴るに限る。角力で言うところの張り手ってやつだ。これを二つ三つ食らわせたら、泣かない女はいない。泣かせるのが幸せなら、俺はこれからますます角力の稽古を頑張るよ、世界の女を殴って泣かせてやる」
「何を言うのよ。話が全然違うじゃない。才兵衛、お前は19よ。お前のお父さんは、19の時にはもう茶屋遊びとか何でも一通り経験済みだったのよ。まあ、お前も、花見がてらに上方へ行って、島原でも行って遊んで、千両二千両使ったって、減るような財産じゃないし、気に入った女がいたら身請けして、どこか景色のいいところに素敵な家を建てて、その女の人と、しばらくイチャイチャするのもいいじゃないか。お前の好きなところに、お前の気ままな立派なお屋敷を建ててあげましょう。そしたら、私の方から、米、油、味噌、塩、醤油、薪炭、季節の着替え、何でも届けてあげるし、お金だって欲しいだけ送ってあげるし、その女の人一人じゃ寂しいなら、妾を京からもう二、三人呼び寄せようか、あと、振袖を着た若い腰元3人、それに中居、茶の間、お裁縫さん、あと下働きの女中2人、小姓2人、小坊主1人、按摩の座頭1人、お酒の相手には隣の伝右衛門、料理人1人、駕籠かき2人、履物係2人、手代1人、まあざっと、これぐらい揃えてあげるつもりだから、悪いことは言わない、まあ花見がてらに、――」
「上方は、一度行ってみたいなと思っていました」
「お前さえその気になったら、あとはもう、立派なお屋敷を作ったり、妾でも腰元でも、按摩の座頭でも、――」
「そんなのはつまらない。上方には黒獅子って強い大関がいるそうです。どうにかしてその黒獅子を土俵に叩きつけて、――」
「まあ、なんて可哀想なことを考えているの。好きな女と立派なお屋敷に住んで、お酒の席の楽しみには伝右衛門を、――」
「その屋敷には、土俵がありますか」

原文 (会話文抽出)

「才兵衛や、まあここへお坐り。まあたいへん鬚が伸びているじゃないか、剃ったらどうだい。髪もそんなに蓬々とさせて、どれ、ちょっと撫でつけてあげましょう。」
「かまわないで下さい。これは角力の乱れ髪と言って粋なものなんです。」
「おや、そうかい。それでも粋なんて言葉を知ってるだけたのもしいじゃないか。お前はことし、いくつだい。」
「知ってる癖に。」
「十九だったね。」
「あたしがこの家にお嫁に来たのは、お父さんが十九、お母さんが十五の時でしたが、お前のお父さんたら、もうその前から道楽の仕放題でねえ、十六の時から茶屋酒の味を覚えたとやらで、着物の着こなしでも何でも、それこそ粋でねえ、あたしと一緒になってからも、しばしば上方へのぼり、いいひとをたくさんこしらえて、いまこそあんな、どっちを向いてるのだかわからないような変な顔だが、わかい時には、あれでなかなか綺麗な顔で、ちょっとそんなに俯向いたところなど、いまのお前にそっくりですよ。お前も、お父さんに似てまつげが長いから、うつむいた時の顔に愁えがあって、きっと女には好かれますよ。上方へ行って島原などの別嬪さんを泣かせるなんてのは、男と生れて何よりの果報だろうじゃないか。」
「なんだつまらない。女を泣かせるには殴るに限る。角力で言えば張手というやつだ。こいつを二つ三つくらわせたら、泣かぬ女はありますまい。泣かせるのが、果報だったら、わしはこれからいよいよ角力の稽古をはげんで、世界中の女を殴って泣かせて見せます。」
「何を言うのです。まるで話が、ちがいますよ。才兵衛、お前は十九だよ。お前のお父さんは、十九の時にはもう茶屋遊びでも何でも一とおり修行をすましていたのですよ。まあ、お前も、花見がてらに上方へのぼって、島原へでも行って遊んで、千両二千両使ったって、へるような財産でなし、気に入った女でもあったら身請して、どこか景色のいい土地にしゃれた家でも建て、その女のひとと、しばらくままごと遊びなんかして見るのもいいじゃないか。お前の好きな土地に、お前の気ままの立派なお屋敷をこしらえてあげましょう。そうして、あたしのほうから、米、油、味噌、塩、醤油、薪炭、四季折々のお二人の着換え、何でもとどけて、お金だって、ほしいだけ送ってあげるし、その女のひと一人だけで淋しいならば、お妾を京からもう二、三人呼び奇せて、その他、振袖のわかい腰元三人、それから中居、茶の間、御物縫いの女、それから下働きのおさんどん二人、お小姓二人、小坊主一人、あんま取の座頭一人、御酒の相手に歌うたいの伝右衛門、御料理番一人、駕籠かき二人、御草履取大小二人、手代一人、まあざっと、これくらいつけてあげるつもりですから、悪い事は言わない、まあ花見がてらに、――」
「上方へは、いちど行ってみたいと思っていました。」
「お前さえその気になってくれたら、あとはもう、立派なお屋敷をつくって、お妾でも腰元でも、あんま取の座頭でも、――」
「そんなのはつまらない。上方には黒獅子という強い大関がいるそうです。なんとかしてその黒獅子を土俵の砂に埋めて、――」
「ま、なんて情無い事を考えているのです。好きな女と立派なお屋敷に暮して、酒席のなぐさみには伝右衛門を、――」
「その屋敷には、土俵がありますか。」

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