太宰治 『ヴィヨンの妻』 「ごめん下さい」…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『ヴィヨンの妻』

現代語化

「すみません」
「すみません。大谷さん」
「大谷さん! いらっしゃいますか?」
「なんだ」
「なんだじゃないですよ」
「こんな、ちゃんとした家があるくせに、泥棒するなんて、どうしたんですか。人の悪い冗談はやめて、あれを返してください。さもないと、私はこれからすぐ警察に訴えます」
「何を言ってるんだ。失礼なことを言うな。ここは、お前たちの来る所じゃない。帰れ! 帰らなければ、僕のほうからお前たちを訴えてやる」
「先生、いい度胸ですね。お前たちの来る所じゃない、とはよく言いましたね。呆れてものが言えませんよ。他のこととは違いますよ。よその家の金を、冗談にもほどがありますよ。今までだって、私たち夫婦は、あなたのせいで、どれだけ苦労させられてきたか、わかってないんでしょう。それなのに、こんな、今夜みたいな情けないことをしでかしてくれるんですから。先生、私は見損ないましたよ」
「ゆすりだ」
「恐喝だ。帰れ! 文句があるなら、明日聞く」
「とんでもないことを言うなあ、先生。すっかりもう一人前の悪党ですね。それではもう警察へ頼むしかないですね」
「勝手にしろ!」
「いらっしゃいましたか」
「やあ、これは奥さんですか」

原文 (会話文抽出)

「ごめん下さい」
「ごめん下さい。大谷さん」
「大谷さん! いらっしゃるんでしょう?」
「なんだい」
「なんだいではありませんよ」
「こんな、ちゃんとしたお家もあるくせに、どろぼうを働くなんて、どうした事です。ひとのわるい冗談はよして、あれを返して下さい。でなければ、私はこれからすぐ警察に訴えます」
「何を言うんだ。失敬な事を言うな。ここは、お前たちの来るところでは無い。帰れ! 帰らなければ、僕のほうからお前たちを訴えてやる」
「先生、いい度胸だね。お前たちの来るところではない、とは出かした。呆れてものが言えねえや。他の事とは違う。よその家の金を、あんた、冗談にも程度がありますよ。いままでだって、私たち夫婦は、あんたのために、どれだけ苦労をさせられて来たか、わからねえのだ。それなのに、こんな、今夜のような情ねえ事をし出かしてくれる。先生、私は見そこないましたよ」
「ゆすりだ」
「恐喝だ。帰れ! 文句があるなら、あした聞く」
「たいへんな事を言いやがるなあ、先生、すっかりもう一人前の悪党だ。それではもう警察へお願いするより手がねえぜ」
「勝手にしろ!」
「いらっしゃいまし」
「や、これは奥さんですか」

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