夢野久作 『戦場』 「立てえ銃……休めえ」…

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青空文庫図書カード: 夢野久作 『戦場』

現代語化

「立てえ銃……休めえ」
「気をつけろ……」
「みんなわかったか」
「……わかりました……」
「……よろしい……たいそうよろしい……今のドイツは、何カラットもの宝石よりも、おまえたちに与える一発の弾丸の方が、もっともっと大事なものなんだ。それと同様に、おまえたちの命が半分でも、四分の一残っていてもいいから、ヴェルダンの要塞に突っ込まなきゃならないのが、俺たち軍医の仕事だ……わかったか……」
「わかりました」
「……よろしい……もうちょっと話してやろう……近い将来、ドイツの艦隊が、イギリスとフランスの連合艦隊をドーバー海峡から一掃してテムズ川河口に押し寄せる。そうしたらロンドンは24時間以内に人のいない廃墟になるだろう。一方でヴェルダンが陥落してカイザーの宮廷列車がパリに到着する。逃げ場を失った連合軍はピレネー山脈とアルプス山脈の内側で、ことごとく殲滅されるだろう。ドイツの三色旗が世界の文化を支配する時代が来るだろう。そのときに、おまえたちは一人残らず戦死していなければいけない。それを嫌がるやつは今すぐ銃殺してやる。……味方の弾丸を減らして死ぬのも、敵の弾丸を減らして死ぬのも死に方は同じだ。でも、名誉はまるで違うぞ……わかったか……」
「わかりました」
「……よし行け……あそこの左翼にいる小柄な軍曹……お前の傷が一番軽い上腕貫通だろう。お前……負傷兵を引率して戦場に戻れ。傷が軽かったので戻ってきましたと、所属部隊長に言えよ……いいな……」
「……はっ……陸軍歩兵軍曹……メッケルは負傷兵……八十四名を引率してヴェルダンの戦線に戻ります。軽傷でしたので戻ってきましたと各部隊長に報告します」
「……よろしい……今日のことは永久に黙っていてやる……わかったか……」
「……わかりました。ありがとうございます」
「……やあ……ケンメリヒ中尉。ご苦労様でした。兵を引率して休んでください。ご覧の通り片付きましたから……ははは……」

原文 (会話文抽出)

「立てえ銃……休めえ」
「気を附け……」
「皆わかったか」
「……わかりました……」
「……よろしい……大いによろしい……現在の独逸は、数百カラットの宝石よりも、汝等に与える一発の弾丸の方が、はるかに勿体ない位、大切な場合である。同様に汝等の生命が半分でも、四分の一残っていても構わない、ヴェルダンの要塞にブッ付けなければならないのが我儕、軍医の職務である……わかったか……」
「わかりました」
「……よろしい……もうすこし云って聞かせる……近い中に独逸の艦隊が、英仏の聯合艦隊をドーバーから一掃してテイムス河口に殺到する。そうしたら倫敦は二十四時間の中に無人の廃墟となるであろう。一方にヴェルダンが陥落してカイゼルの宮廷列車が巴里に到着する。逃場を失った聯合軍はピレネ山脈とアルプス山脈の内側で、悉く殲滅されるであろう。独逸の三色旗が世界の文化を支配する暁が来るであろう。その時に汝等は一人残らず戦死しておれよ。それを好まない者はたった今銃殺してやる。……味方の弾丸を減らして死ぬるも、敵の弾丸を減らして死ぬるも死は一つだ。しかし光栄は天地の違いだぞ……わかったか……」
「わかりました」
「……よし行け……その左翼の小さい軍曹……汝の負傷は一番軽い上膊貫通であろう。汝……引率して戦場へ帰れ。負傷が軽いので引返して来ましたと、所属部隊長に云うのだぞ……ええか……」
「……ハッ……陸軍歩兵軍曹……メッケルは負傷兵……八十……四名を引率してヴェルダンの戦線に帰ります。軽傷でありましたから帰って来ましたと各部隊長に報告させます」
「……よろしい……今夜の事は永久に黙っておいてやる……わかったか……」
「……わかりました。感謝いたします」
「……ヤッ……ケンメリヒ中尉。御苦労でした。兵を引取らして休まして下さい。御覧の通り片付きましたから……ハハハ……」

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