夢野久作 『戦場』 「ハイ。この候補生は前進の途中、後方から味…

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「はい。この候補生は前進中、後方から味方の弾丸でふくらはぎを撃たれました。それで這いながら後退する途中、目の前の十数メートルのところで敵の曳火弾が炸裂したそうです。その時は奇跡的に負傷はしなかったようですが、激しい閃光に顔面を打たれた瞬間に視覚を失ってしまったようです。明るいのと暗いのはわかりますが、それ以外の色はただ灰色の物体がぼんやりと目の前を動いているように思うだけで、銃の照準などはもちろんできませんと申していましたが……まつ毛なども焼け縮れているようです……」
「うむ。それで貴官はどう診断しましたか」
「はい。おそらく戦場で陥りやすい神経系統の一部の一時的な麻痺だろうと思いまして、できれば後退させていただきたいと考えております。時日が経過すれば自然と回復すると思いますから……視力の方がふくらはぎの回復よりも遅れるかもしれません……」
「うむ。なるほどなるほど」

原文 (会話文抽出)

「ハイ。この候補生は前進の途中、後方から味方の弾丸に腓を射抜かれたのです。それで匐いながら後退して来る途中、眼の前の十数メートルの処で敵の曳火弾が炸裂したのだそうです。その時には奇蹟的に負傷はしなかったらしいですが、烈しい閃光に顔面を打たれた瞬間に視覚を失ってしまったらしいのです。明るいのと暗いのは判別出来ますが、そのほかの色はただ灰色の物体がモヤモヤと眼の前を動いているように思うだけで、銃の照準なぞは無論、出来ないと申しておりましたが……睫毛なぞも焼け縮れておりますようで……」
「ウム。それで貴官はドウ診断しましたかな」
「ハイ。多分戦場で陥り易い神経系統の一部の急性痲痺だろうと思いまして、出来るなら後退さして頂きたい考えでおります。時日が経過すれば自然と回復すると思いますから……視力の方が二頭腓脹筋の回復よりも遅れるかも知れませぬが……」
「ウム。成る程成る程」

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