夢野久作 『ココナットの実』 「アッ……コレ爆弾、アブナイジャないの、こ…
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青空文庫図書カード: 夢野久作 『ココナットの実』
現代語化
「あ……これ爆弾、危ないじゃないですか、こんなもの」
「エラちゃんってば……この間……言ったでしょ。日暮れ方にこの窓から覗いていると、あのブルドッグの狒々親父が、往来を向こうから横切って、私のところへ通ってくるのが見える。その威張った、人を人とも思わない図々しい姿を見ると、頭の上から爆弾か何か落としたくなるって……」
「ええ……そう言ったわよね。今でもそう思ってるんでしょ……」
「その時に私が、それじゃ近いうちにすごいのが仲間の手に這入るから、一つ持ってきてあげましょう。その代わりきっとあいつの頭の上に落としてくれますかって念を押したら、貴女はきっと落としてやるから、きっと持ってくるように……」
「ええ。そう言ったわ。たった今はっきりと思い出したわ」
「その約束をきっと守っていただけるなら、このおもちゃを……おいしい『ココナッツの実』を貴女に一つ差し上げます。どうぞあいつに食べさせてやってください。あいつは財界のムッソリーニです。あいつはお金の力で今の政府を牛耳って、アメリカと戦争させようとしているんです。現在の財界の行き詰りを戦争で打ち破ろうと企んでいるのです。日本は紙と黄金の戦争では世界中のどこの国にも勝てない。下層民の血を流す鉄と血の戦争以外に日本民族の生きていく道はない。不景気を救う道はないと高唱しているのです。あいつはこの世の悪魔です。私たちの共同の敵なのです……あいつは……イヤあなたのダンナさんのことを悪く言って済みませんが……」
「……いいわよ……わかってるわよ。そんなことどうでもいいじゃないの。もうじき片付くんだから……」
「……大丈夫ですか……」
「大丈夫よ。わけはないわ。あの親父はここへ来るたんびにきっと、この窓の真下の勝手口のところで立ち止まって汗を拭くんだから……そうして色男気取りで帽子をちゃんと冠り直して、ネクタイをちょっと触ってから勝手口の扉を押すのがお決まりになっているんだから、その前に落せば一ぺんに吹っ飛んでしまうかもしれないわね。そうしたら、なおのこと面白いけど……ホホホ……」
原文 (会話文抽出)
「アッ……コレ爆弾、アブナイジャないの、こんなもの」
「エラチャンは……この間……云ったでしょう。日暮れ方にこの窓から覗いていると、あのブルドッグの狒々おやじが、往来を向うから横切って、妾の処へ通って来るのが見える。その威張った、人を人とも思わぬ図々しい姿を見ると、頭の上から爆弾か何か落してみたくなるって……」
「ええ……そう云ったでしょうよ。今でもそう思っているから……」
「その時に僕が、それじゃ近いうちにステキなスゴイのが仲間の手に這入るから、一つ持って来て上げましょう。その代りにキット彼奴の頭の上に落してくれますかって念を押したら、貴女はキット落してやるから、キット持って来るように……」
「ええ。そう云ったわ。タッタ今ハッキリと思い出したわ」
「その約束をキット守って下さるなら、このオモチャを……おいしい『ココナットの実』を貴女に一つ分けて上げます。どうぞ彼奴に喰べさしてやって下さい。あいつは財界のムッソリニです。彼奴はお金の力で今の政府を押え付けて、亜米利加と戦争をさせようとしているんです。現在の財界の行き詰りを戦争で打ち破ろうと企んでいるのです。日本は紙と黄金の戦争では世界中のどこの国にも勝てない。下層民の血を流す鉄と血の戦争以外に日本民族の生きて行く途はない。不景気を救う道はないと高唱しているのです。彼奴はこの世の悪魔です。吾々の共同の敵なのです……彼奴は……イヤあなたの旦那の事を悪るく云って済みませんが……」
「……いいわよ……わかってるわよ。そんな事どうでもいいじゃないの。もうジキ片付くんだから……」
「……大丈夫ですか……」
「大丈夫よ。訳はないわ。あのオヤジはここへ来るたんびにキット、この窓の真下の勝手口の処で立ち止まって汗を拭くんだから……そうして色男気取りでシャッポをチャンと冠り直して、ネクタイをチョット触ってから勝手口の扉を押すのが紋切型になっているんだから、その前に落せば一ペンにフッ飛んでしまうかも知れないわね。そうしたら、なおの事おもしろいけど……ホホホ……」
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