夢野久作 『支那米の袋』 「アハハハハ。非道え眼に会っちゃったナ。あ…

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青空文庫図書カード: 夢野久作 『支那米の袋』

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「ははははは。ひどい目に遭っちゃったな。後でヤングにちょっと多めに払ってもらおう」
「ヂックの野郎が余計なことを言ったからだよ……こんなに血が出てきた」
「はははははすごいな。袋の中から耳たぶをかじり切るとは……」
「かじり切ったんじゃない。引きちぎったんだ。いきなり……」
「俺は小便をかけられた。これ……」
「うわー。あれはスチュワードが連れてきたデブの娘だろう。彼のムチで縛ってあったから……」
「うん。パン屋のソニーさんだよ。おかげで高かったルパシカが台無しだ。5ドルじゃ足りない」
「まあぐちぐち言うなよ。女の小便なら縁起がいいかもしれない」
「ばかを言うな……裏腹だあ……」
「わははははは」
「さあ優しく優しく。暴れると高いところから落としますよ。落ちたら目が飛び出しますよ」
「小便なんかかけないように願いますよ。はははははは」
「どっこいどっこい……どうだいこの腹部の柔らかでふっくらしたことは……とても千金で買えないよ」
「痛い痛い。そこは耳たぶじゃないって……あちちち……この畜生……」
「はははは。そこに頭をぶつけろよ。そのほうが早い」
「痛い痛い……またやったな……畜生ッ……こうだぞ……」

原文 (会話文抽出)

「アハハハハ。非道え眼に会っちゃったナ。あとでいくらかヤングに増してもらえ」
「ヂックの野郎が余計な宣告を饒舌るもんだから見ろ……こんなに血が出て来た」
「ハハハハ恐ろしいもんだナ。袋の中から耳朶を喰い切るなんて……」
「喰い切ったんじゃねえ。引き千切りかけやがったんだ。だしぬけに……」
「俺あ小便を引っかけられた。コレ……」
「ウワ――。あれあスチューワードが持ち込んだ肥っちょの娘だろう。彼奴の鞭で結えてあったから……」
「ウン。あのパン屋のソニーさんよ。おかげで高価え銭を払ったルパシカが台なしだ。とても五弗じゃ合わねえ」
「まあそうコボスなよ。女の小便なら縁起が宜いかも知れねえ」
「人をつけ……ウラハラだあ……」
「ワハハハハハ」
「サア温柔しく温柔しく。あばれると高い処から取り落しますよ。落ちたら眼の玉が飛び出しますよ」
「小便なんぞ引っかけないように願いますよだ。ハハハハハハ」
「ドッコイドッコイ……どうでえこの腹部のヤワヤワふっくりとした事は……トテモ千金こてえられねえや」
「アイテッ。そこは耳朶じゃねえったら……アチチチ……コン畜生……」
「ハハハハ。そこへ脳天を打っ付けねえ。その方が早えや」
「アイテテ……又やりやがったな……畜生ッ……こうだぞ……」

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