コロレンコ Vladimir Galaktionovick Korolenko 森林太郎訳『樺太脱獄記』 「どうだい。番兵も何も附いてゐないぢやない…
青空文庫現代語化 Home > 書名リスト > コロレンコ Vladimir Galaktionovick Korolenko 森林太郎訳『樺太脱獄記』 >
GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
正しく現代語化されていない可能性もありますので、必ず原文をご確認ください。
青空文庫図書カード: コロレンコ Vladimir Galaktionovick Korolenko 森林太郎訳『樺太脱獄記』
現代語化
「どうだい。番兵も何もついてないじゃないか」
「黙ってろ。なんでここに番兵なんかいるものか。番兵がいなくても、誰も逃げやしない。島は広いけど、荒地ばっかりだ。どこへ行っても餓死するしかない。島の外は海だ。ほら、音が聞こえるだろ」
「あの音が聞こえるか。国の諺に、八方水に囲まれた、これが不運だっていうのがある。この土地はどうしても海を渡らないと逃げられない。それから船に乗れる所まで逃げるにも、道がかなり長い。牧場や、森や、警戒線を通らないといけない。俺ドキドキするよ。あの海の音が不幸を予言してるみたいで仕方ない。どうにかこの樺太から逃げられたらいいんだけどな。俺も年取ったしな。もうこれまで2度逃げた。1度目はブラゴヴェシチェンスクで捕まった。2度目はロシアまで帰って捕まった。それでまたここへ戻ってきた。どうにもこのままここで死ぬことになるのかなあ」
「そんなこと言うなよ」
「お前はまだ若い。もう俺みたいに年を取って、体が利かなくなってからじゃダメだ。あの海のすごい音を聞いてくれ」
原文 (会話文抽出)
「どうだい。番兵も何も附いてゐないぢやないか。」
「黙つてゐろ。なんでこゝに番兵なぞがいるものか。番兵が無くつたつて、誰も逃げはしない。島は広いが、荒地ばかりだ。どこへ行つても飢ゑ死にをするより外ない。島より外は海だ。それ、音も聞えるだらう。」
「あの音が聞えるかい。国の諺に、八方水で取り巻かれた、これが不運だといふのである。この土地はどうしても海を渡らなくては逃げられない。それから船に乗る所まで逃げるにも道程が可なりある。牧場や、森や、警戒線を通らなくては行かれない。己は動悸がする。あの海の音が不幸を予言してゐるやうでならない。どうも己にこの樺太が逃げられれば好いが。己も年が寄つたでな。もうこれまで二度脱けた。一度はブラゴヱシユチエンスクで掴まつた。二度目はロシアまで帰つて掴まつた。そして又こゝへ戻つて来た。どうもこの儘こゝで死ぬる事になりさうでならない。」
「さう云つたものでもないよ」
「お前はまだ若い。もう己のやうに年を取つて、体が利かなくなつては駄目だ。あの海の凄い音を聞いてくれ。」
青空文庫現代語化 Home > 書名リスト > コロレンコ Vladimir Galaktionovick Korolenko 森林太郎訳『樺太脱獄記』 >
青空文庫現代語化 Home リスト