宮本百合子 『二つの庭』 「世間の習慣では、そういう子供はかわいそう…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『二つの庭』

現代語化

「普通の考えだと、そういう子供は可哀想だけど。でも、罪悪なのかなぁ――女の人がその子の母親になった動機が罪悪って言えるのかなぁ――」
「でもね、子供を生むべき女の人と子供を、そういう状況に置く男がいるなら、それは罪悪的だよ。子供ができるできないに関わらず。世の中がどう思うとか思わないとか関係なく――そうでしょ？」
「そういう状況なのに、結局ズルズルと関係を続けてるってことが変なのよ――しかも、一方にちゃんと家庭があるんだから……」
「その意味では女の人にも、同じくらい責任があるってことよ。知らなかったわけじゃないんだから」
「愛って、本当に愛のはずなのに――ケンカとか恨みとかじゃないはずなのに――変な話。なんで、こんなに、どこでも愛はごたごたの苦しみなの？　本当に、なんで？　愛が苦しみなんて――」

原文 (会話文抽出)

「世間の習慣では、そういう子供はかわいそうね。でも、罪悪かしら――一人の女のひとがその子の母親となるようになった動機が罪悪といえるかしら――」
「でもね、当然母親になるはずの女の人と子供とを、そういう条件においておく男があれば、それは罪悪的だわ。子供が生れる生れないにかかわらず、よ。世間が、どうみる、みないに、かかわらず――そうでしょう？」
「そういう条件だのに、それなりずるずるに進行した全体の関係そのものが変よ――まして一方に、もうちゃんと出来上った家庭生活があったりすれば……」
「その意味では女のひとにだって、同じだけ責任があるわけだわ、知らなかったのではないんだもの」
「愛なんて、ほんとに愛なはずだのに――紛糾や怨ではないはずなのに――妙ねえ。なぜ、こんなに、どこでもかしこでも愛はごたごただの苦しみだのなの？　ほんとに、なぜ？　愛が苦しみだなんて――」

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