宮本百合子 『二人いるとき』 「きょうの『女の言葉』よみました?」…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『二人いるとき』

現代語化

「今日の『女の言葉』を読みました?」
「朝日新聞の?まだ読んでないわ、何か出てるの?」
「ある女の人が投書してるんですけれどね、電車の中で私たちみたいな女がドストエフスキーみたいな厚い難しいものを読んでいるのを見かけるけど、果して彼女たちはどこまで理解して読んでいるんだろう、って言うんです。電車の中なんかでは軽い雑誌とかパンフレットでも読むべきだって、その女の人は言うんです」
「何て分からないんだろう!その人」
「生意気ってこと?」
「さあ。――とにかく机に向かわなきゃドストエフスキーなんて分からないって言うんでしょう」
「変よね、私たち誰だって電車の中で読んだ学課以外の本のおかげで、ようやく読書力がついたんだわ」
「その人には、往復の電車で本が読めるのがどんなに勤めている者の喜びと慰安だか分かってないんですのね、きっと」
「何しろ、現にこういうのがあるんですからね」
「『緋文字』」
「何だか辛かった。どこかに今日の『女の言葉』を見た人がいて、ははん、あれだな、なんて見られているんじゃないかと思って」
「まさか!」
「現実に、昼間働いて家に帰れば疲れているんですからね」
「机にきちんと向かわなければ読めないんだったら、私たちのように暮らしてる者は結局一冊の本だって読めないってことになっちゃうんです」

原文 (会話文抽出)

「きょうの『女の言葉』よみました?」
「朝日のでしょう? まだ見なかったわ、何か出ているの?」
「ある女のひとが投書しているんですけれどね、電車のなかで私たちみたいな女がドストイェフスキーみたいな厚いむずかしいものなんかをよんでいるのを見かけるが、果して彼女達はどこまで理解してよんでいるのだろう、って云うんです。電車の中なんかでは軽い雑誌とかパンフレットでもよむべきだって、その女のひとは云うんです」
「何てわからないんだろう! そのひと」
「生意気だって云うの?」
「さあ。――とにかく机に向わなけりゃドストイェフスキーなんぞわからないって云うんでしょう」
「変なのね、私たち誰だって電車の中でよんだ学課以外の本のおかげで、どうやら読書力がついたんだわ」
「そのひとには、往復の電車で本をよめるというのがどんなに勤めているもののよろこびと慰安だか分ってないんですのね、きっと」
「何しろ、現にこういうのがあるんですからね」
「緋文字」
「何だか苦しかった。どっかに今朝の『女の言葉』を見た人がいて、ははん、あれだな、なんて見られているんじゃないかと思って」
「まさか!」
「現実に、ひる間つとめて家へかえれば疲れているんですからね」
「机にきちんと向わなければ読めないんだったら、私たちのようにして暮しているものは結局一冊の本だってよめやしないと云うことになるんです」

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