宮本百合子 『帆』 「おいでですか?」…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『帆』

現代語化

「おいでですか?」
「はい、今日はいらっしゃいますよ、どうぞ」
「ちょっと、三島さん」
「なんだよ」
「お客さんなんですよ」
「なーんだ」
「何かと思った」
「誰だよ?そのお客さん」
「それがね、千束から来た方なんですよ、女の人は来ていないかって――どうも酒屋の主人みたいですよ」
「へえ」
「あなた何も知らないんですか?」
「知らないよ。――いつ頃から来てるの?」
「さあ」
「もう1時間くらいになりますね」
「いい具合に面倒なこともなくて済むからいいけど、嫌な気分になりますよ。いきなり、大塚いねっていう女がいる筈ですがって、私の顔じろじろ見るんですもの――」
「――逃げたんでしょうか?」
「さあ……」
「じゃ、そういうわけですからよろしく」
「じゃ」
「そうですか、失礼しました」
「やあ」
「どうも失礼しました。どうぞ」
「いいんですか?」
「はい、どうぞ」
「――。千束の人ですか?」
「はい、そうです」
「どうも困っちゃったんです。変な疑いとかけられるから」
「どうしたんですか、本当に知らないんですか?」
「本当です。――今の男の奥さんの妹にあたる女っていうのが、私もちょっと知ってるには知ってるんですが、2日前くらいに消えたそうです。鏡台の中に私の手紙があったからって来たんですが……私はそんなこと全然知らないんですよ」
「ひどく不満そうですね」
「いや、そういうわけじゃないんです」
「うざいんですからね」

原文 (会話文抽出)

「おいでですか?」
「ええ、今日はいらっしゃいますよ、さあどうぞ」
「ちょいと、三島さん」
「なんです」
「お客さまなんですよ」
「なあーんだ」
「何かと思っちゃった」
「誰です? そのお客さん」
「それがね、千束から来た方なんですよ、女の人は来ていないかって――どうも銘酒屋さんか何かの主人らしゅうござんすよ」
「へえ」
「あなた何にも御存じなかったんですか」
「知りませんよ。――いつ頃から来てるんです」
「さあ」
「もう小一時間たちますね、かれこれ」
「いい塩梅に面倒なこともなくて済みそうだからいいけれど、厭な気持がしますですよ。いきなり、大塚いねと云う女がいる筈ですがって、私の顔をじろじろ見るんですもの――」
「――逃げたんでしょうか」
「さあ……」
「じゃ、そんな訳ですから何分よろしゅう」
「じゃ」
「そうですか、失礼しました」
「やあ」
「どうも失礼してしまいました。どうぞ」
「いいんですか」
「ええ、どうぞ」
「――。千束の人ですか」
「ええ、そうです」
「どうも困っちゃったんです。妙な嫌疑なんかかけやがるから」
「どうしたんです、本当に御存じないんですか」
「本当ですとも。――今の男の妻君の妹分に当る女ってのが、私もちょっと知ってるには知ってるんですが、二日ばかり前にいなくなったんだそうです。鏡台の中とかに私の所書があったからって来たんですが、……私はそんなことちっとも知りゃしないんですよ」
「ひどく不満そうですね」
「いや、決してそう云う訳じゃないんです」
「五月蠅いですからね」

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