宮本百合子 『白い蚊帳』 「――じゃ今日だけ一寸臥ていらっしゃるんじ…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『白い蚊帳』

現代語化

「――じゃ今日だけちょっと休んでたらいいんじゃないの」
「国府津から帰ると悪いんだって――あと6日ぐらいね」
「なんか寒いね、障子閉めてくれな」
「そののは一時的で治ったって、こんなに弱ってるのはだめよ、第一食欲がないんだもん。なんでちゃんとした人に診てもらわないの？」
「診せたよ、だから――久保さんに」
「更年期にありがちなことだから、その方は何にも心配することはないんだよ。――疲れだよ」
「どうですか、ちょっとは何か食べられますか？」
「国府津にこいって言われたから悪いんだよ」
「夜食べるもの、何か作った？」
「いいえ、何も作りませんでした。食べたくないって言いましたから……」

原文 (会話文抽出)

「――じゃ今日だけ一寸臥ていらっしゃるんじゃなかったのね」
「国府津から帰ると悪いのさ――あとさき六日ばかりだね」
「何だかすーすー寒いね、障子閉めとくれな」
「その事は一時的で癒ったって、こんなに弱っているのはいけないわ、第一食慾のないなんか。どうしてちゃんとした人に診てお貰いんならないの」
「診せたよ、だから――久保さんに」
「更年期にあり勝ちのことだから、その方は何にも心配することはないんだよ。――疲労だよ」
「どうですね、少しは何か食べられますか」
「国府津へなんか来いと仰云るから悪いんですよ」
「晩に上るもの、何か拵えた？」
「いいえ、何も致しませんでした。召上りたくないと仰云いましたから……」

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