宮本百合子 『一太と母』 「私もそうおっしゃられると一言もございませ…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『一太と母』

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「私もそう言われると返す言葉もないんですが、もうこうなってくると、今目の前の心配ばかりで、とても将来のことを考えるなんてできません。明日母子2人でどうやって生きていこうと思うと、何も考えられなくなるんです。――どうも皆さんのご厚意に甘えて生きているような感じで……こんなにお世話になっていない先生のところまで来て厚かましいのはわかってます。」
「そういう意味じゃないんです。結局のところ今はちょっとお金をあげたところでどうにもならないし、お子さんもいるわけだから、なんとかして安定した生活――どうしてもダメなら女中奉公か別荘番をしてでも、決まった収入のある生活をして、最低限の教育は受けてもらわないと、後で後悔することになると思うんです。」
「私もそればかりが心配でしてね。こうしているうちに不良にでもなったら、死んだ親父にも顔向けできないと思います。――でも、今までそれなりに暮らしていたので、今更他人のために這いずり回る気にもなれなくて……」
「……そうなると、あなたがさっき言った朝鮮に行くっていうのもどうかな……決断が必要ですね。」

原文 (会話文抽出)

「私もそうおっしゃられると一言もございませんですが、もうこう堕ちてしまうと、全く今々の心配に追われるばかりで、とても考えを纏めるなんてことは出来なくなってしまうんです。さあ、明日母子二人がどうして命をつないで行こうと思うと、もうボーっとなってしまいますばかりでね。――どうやらこうやら皆さんの御同情にあずかって過して来ておりますような訳で……こんなにして、御縁の浅い先生のところまで上りまして厚かましいのは承知でございます」
「そういう意味で云ったのじゃない。結局のことは当座の端した金ではどうにもならんし、そうやって御子息もあってみれば、何とか法をつけて、安定な生活――已を得ずんば下女奉公か別荘番をしてなり、定った独立の収入のある生活をして、一通りの教育をも与えてやんなさらないと、後悔の及ばないことになってはいかんと思うからです」
「私も、そればかりが心配でございましてね。こうやっているうちに不良にでもなられたら、死んだ親父にも申訳ないと思いますし。――けれどもなまじっか人並以上の暮しをしていた悲しさで今更他人の台所を這いずる気にもなれず……」
「……そういうんでは、あなたが今云った朝鮮行きもどんなものかな……一つ大決心がいるね」

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