宮沢賢治 『税務署長の冒険』 「立て、こん畜生太いやつだ。炭焼がまの中へ…
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青空文庫図書カード: 宮沢賢治 『税務署長の冒険』
現代語化
「立て、このクソデブ。炭焼き窯の中に入れるから、覚悟しろ」
「誰だ?君、税務署ですか?」
「違う」
「とにかく引っ張っていけ」
「おい、俺がここで見張ってるから、早く社長と監査役を呼んでこい」
「おう」
「おい、言わないか、クソ野郎。君、税務署だろ?」
「違う」
「税務署じゃなくて何をしに来たんだ?」
「俺はトケイの乾物屋だ」
「トケイの乾物屋が何しにこんなところに来るんだ?」
「椎茸を買い付けに来たんだ」
「椎茸」
「ああ、ここで椎茸を作ってると思ったから、見ていたんだ。名刺もちゃんと組合の方に置いてある」
「正直な椎茸屋が何しに鍵のかかった家の窓から忍び込むんだ?」
「椎茸小屋の中に入ってもいいと思ったんだ。外で待ってるのも飽きたし、つい入ってみたんだ」
「うん。そう言えばそうだなあ」
「おい、そろそろ縄を解いてくれよ。椎茸はいくらでも高く買うからさ。俺だってトケイに嫁と子供がいるんだ。こんな目に遭うためにここに来たわけじゃない。どうか縄を解いてくれよ」
「うん、まぁ今みんな来るからちょっと待ってくれ。よく話を聞いてから社長や重役の方々に報告すればよかったなあ」
「だから逃がしてくれよ。俺、君に後でトケイに帰ったら100円送るからさ」
「まぁちょっと待ってくれよ」
原文 (会話文抽出)
「立て、こん畜生太いやつだ。炭焼がまの中へ入れちまふから、さう思へ。」
「誰だ、きさん、収税だらう。」
「いゝや。」
「とにかく引っ括れ。」
「おい、おれが番してるから早く社長と鑑査役に知らせて来い。」
「おゝ。」
「おい、云はなぃかこん畜生、貴さん収税だらう。」
「さうでない。」
「収税でなくて何しに入るんだ。」
「おいらトケイの乾物商だよ。」
「トケイの乾物商が何しにこんなとこへ来るんだ。」
「椎蕈買ひに来たよ。」
「椎蕈。」
「あゝこゝで椎蕈つくってると思ったから見てゐたんだ。名刺もちゃんと組合の方へ置いてある。」
「正直な椎蕈商が何しに錠前のかかった家の窓からくぐり込むんだ。」
「椎蕈小屋の中へはひったっていゝと思ったんだ。外で待ってゐても厭きたからついはひって見たんだよ。」
「うん。さう云やさうだなあ。」
「おい、いゝ加減にして繩をといて呉れよ。椎蕈はいくらでも高く買ふからさ。おれだってトケイにぁ妻も子供もあるんだ。こゝらへ来て、こんな目にあっちゃ叶はねえ。どうか繩をといて呉れよ。」
「うん、まあいまみんな来るから少し待てよ。よく聞いてから社長や重役の方へ申しあげれぁよかったなあ。」
「だからさ、遁がして呉れよ。おれお前にあとでトケイへ帰ったら百円送るからさ。」
「まあ少し待てよ。」
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