宮沢賢治 『グスコーブドリの伝記』 「先生、気層のなかに炭酸ガスがふえて来れば…

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青空文庫図書カード: 宮沢賢治 『グスコーブドリの伝記』

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「先生、空気中に二酸化炭素が増えると暖かくなるんですか?」
「なるだろう。地球の気温は今まで、主に空気中の二酸化炭素の量で決まっていたそうだから。」
「カルボナード火山島が今噴火したら、地球の気候を変えるくらいの二酸化炭素を出すでしょうか?」
「計算したら、もし今噴火したら、ガスはすぐに大気の上層の風に乗って地球全体を覆うだろう。そして下層の空気や地表からの熱を逃さないようにして、地球全体を平均で5度くらい暖かくすると思う。」
「先生、あれを今すぐ噴かせられないでしょうか?」
「できるだろう。だけど、その作業に行ったら、最後の一人は必ず犠牲になる。」
「先生、私にやらせてください。先生からペンネン先生にお願いの言葉をいただけませんか?」
「ダメだ。お前は若すぎるし、お前の仕事に代われる人はそういない。」
「私みたいな人間は、これからいくらでも出てくるでしょう。私よりもっとすごい人が、もっと立派に、もっと美しく仕事したり笑ったりするんですから。」
「その話はできない。ペンネン技師に話してみろ。」
「それはいいですけど、私がやります。私はもう63歳なんです。ここで死ねれば本望です。」
「だけどこの作業はまだ不確かだ。一度うまく噴火させても、ガスが雨に流されてしまったり、何も思った通りにいかなかったりするかもしれない。先生が今行ってしまうと、後から何も策が講じられなくなると思うんです。」

原文 (会話文抽出)

「先生、気層のなかに炭酸ガスがふえて来れば暖かくなるのですか。」
「それはなるだろう。地球ができてからいままでの気温は、たいてい空気中の炭酸ガスの量できまっていたと言われるくらいだからね。」
「カルボナード火山島が、いま爆発したら、この気候を変えるくらいの炭酸ガスを噴くでしょうか。」
「それは僕も計算した。あれがいま爆発すれば、ガスはすぐ大循環の上層の風にまじって地球ぜんたいを包むだろう。そして下層の空気や地表からの熱の放散を防ぎ、地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろうと思う。」
「先生、あれを今すぐ噴かせられないでしょうか。」
「それはできるだろう。けれども、その仕事に行ったもののうち、最後の一人はどうしても逃げられないのでね。」
「先生、私にそれをやらしてください。どうか先生からペンネン先生へお許しの出るようおことばをください。」
「それはいけない。きみはまだ若いし、いまのきみの仕事にかわれるものはそうはない。」
「私のようなものは、これからたくさんできます。私よりもっともっとなんでもできる人が、私よりもっと立派にもっと美しく、仕事をしたり笑ったりして行くのですから。」
「その相談は僕はいかん。ペンネン技師に話したまえ。」
「それはいい。けれども僕がやろう。僕はことしもう六十三なのだ。ここで死ぬなら全く本望というものだ。」
「先生、けれどもこの仕事はまだあんまり不確かです。一ぺんうまく爆発してもまもなくガスが雨にとられてしまうかもしれませんし、また何もかも思ったとおりいかないかもしれません。先生が今度おいでになってしまっては、あとなんともくふうがつかなくなると存じます。」

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