牧野信一 『痴日』 「以前には隨分聞いた言葉ぢやないか、この頃…

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青空文庫図書カード: 牧野信一 『痴日』

現代語化

「昔よく聞いた言葉だけど、今は呼び方違うかもね。高校生のときとか、経験ある?」
「本当は、絵なんて描きたくないのよ。騙されたの」
「……いいじゃん」
「ずっと見てても飽きない。でも、最近はジェラシーで苦しくなっちゃう。彼女が結婚するの考えると、イライラするの……だって、あの子の体はめっちゃ綺麗で、もう言葉にならないくらい……鳥肌立っちゃう」
「鳥肌立ったことある?」
「え、マジで見る?……でも、色々考えてると、前の君のことって仕方ないなって思う」
「……アホやった」
「私だって、それ以上の気持ちになることがあるんだから」
「顔はそんなに美人ってほどじゃないけど、ヘプバーンみたいな口元で、なんか惹かれるものがあるでしょ?それより、体の美しさはハンパないのよ。女の私も見とれるくらい、きめ細かくてハリがあるの……」
「君とは正反対だな」
「そっくり」
「顔だって、俺は……」
「目つきとか、なんか不思議な落ち着きがあるでしょ?それに、わりと頭よさそうな不良って感じ」
「不良っぽくないよ。そんな感じじゃなくて、むしろ冷たくて、何でも突き放してるように見える……」
「どっちでもいいよ」

原文 (会話文抽出)

「以前には隨分聞いた言葉ぢやないか、この頃は別の言葉になつてゐるかも知れないが。學生時分に經驗があるかね?」
「ほんとうは、あたし畫なんか描きたくはなかつたのよ。だましちやつたのさ。」
「……愉快だね。」
「いつまで見てゐても飽きないわ。それよりも、このごろぢや、嫉妬を覺えて、苦しくなつたりするわ。彼女の結婚を考へると、凝つとしてゐられなくなつたりするのさ。……だつて、まあ、あの子の、體の綺麗さ加滅と云つたら、それあもう、何とも彼とも、云ひやうもない――ふるひつかずには居られないほどの……」
「ふるひついたことは、あるか?」
「あら、眼をまるくしてら……でも、あたし、いろいろ考へて、いつかのお前のことを無理もないと思つてるわ。」
「……馬鹿だつた!」
「あたしだつて、それより激しい氣持になることがあるんだもの。」
「顏はそれほどの美人といふほどのこともないけど、ヘツプバアン見たいな口つきで、何か不敵な魅力を持つてゐるぢやないの。それよりもね、肉體の素晴しさつたらないのよ、女のあたしがつくづく見惚れるほどなんだもの、きめがこまかくて、張りきつてゐて……」
「君とは正反對なんだな。」
「それあもう恰で――」
「顏だつて俺は……」
「眼つきなんかに不思議な落着きを持つてゐるぢやないか。そして相當教養のありさうな不良性で。」
「不良性は感じないわ。そんな感じではない、寧ろ冷たさうな、何でも突つ放してゐる見たいな……」
「どつちでも好いさ。」

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