芥川龍之介 『妖婆』 「じゃ僕は。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『妖婆』

現代語化

「じゃ俺、失礼します。」
「あの石河岸からすぐ車で、近くの病院にお連れしましたが、雨に打たれたせいか、かなり熱が高くて、日が暮れてこっちに帰ってくるころには、もう正気じゃありませんでした。」
「その熱がやっと引いたのは、全く君のお母さんとお敏さんとのおかげだよ。今日でまる3日間、寝言ばっかり言ってるお前の看病で、お敏さんはもちろんお母さんも、ゆっくり寝られなかったんだ。もっともお島婆さんのほうは、お葬式のことは僕が全部取り仕切ってやったけど。それもこれもお母さんの世話になってないものはないんだよ。」
「お母さん。ありがとう。」
「何だよ、お前、私より泰さんに礼を言わなきゃ。」
「もうそろそろ3時でしょう。じゃ私は失礼します。」
「3時? 今はまだ朝じゃないのかい。」
「冗談を言うなよ。」
「この朝顔はさ、あの婆さんの家にいた時から、お敏さんが大事に育ててた鉢植えなんだ。ところがあの雨の日に咲いた瑠璃色の花だけは、なぜか今日までしおれないんだよ。お敏さんはこの花が咲いてる限り、きっと君は回復するって、自分でも信じてたし、俺たちにもよく言ってたんだ。そのおかげで、お前が正気に戻ったんだから、同じ不思議な出来事でも、これだけはなんだかほっとするよ。」

原文 (会話文抽出)

「じゃ僕は。」
「あの石河岸からすぐ車で、近所の御医者様へ御つれ申しましたが、雨に御打たれなすったせいか、大層御熱が高くなって、日の暮にこちらへ御帰りになっても、まるで正気ではいらっしゃいませんでした。」
「その熱がやっと引いたのは、全く君のお母さんとお敏さんとのおかげだよ。今日でまる三日の間、譫言ばかり云っている君の看病で、お敏さんは元より阿母さんも、まんじりとさえなさらないんだ。もっともお島婆さんの方は、追善心に葬式万端、僕がとりしきってやって来たがね。それもこれも阿母さんの御世話になっていない物はないんだよ。」
「阿母さん。難有う。」
「何だね、お前、私より泰さんに御礼を申し上げなくっちゃ。」
「もうかれこれ三時でしょう。じゃ私は御暇しますかな。」
「三時? 今はまだ朝じゃないのかい。」
「冗談云っちゃいけない。」
「この朝顔はね、あの婆の家にいた時から、お敏さんが丹精した鉢植なんだ。ところがあの雨の日に咲いた瑠璃色の花だけは、奇体に今日まで凋まないんだよ。お敏さんは何でもこの花が咲いている限り、きっと君は本復するに違いないって、自分も信じりゃ僕たちにも度々云っていたものなんだ。その甲斐があって、君が正気に返ったんだから、同じ不思議な現象にしても、これだけはいかにも優しいじゃないか。」


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