林不忘 『口笛を吹く武士』 「ちょ、ちょっと待った! 腹の空いておった…

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青空文庫図書カード: 林不忘 『口笛を吹く武士』

現代語化

「ちょ、ちょっと待って!腹減ってるときに言ったことなんて、後で責任取らないよ。」
「今までずっとオススメしてるように、この機会に、千阪様に目を掛けてもらって、小林さんの取り持ちで、上杉家にお勤めにならないんですか?」
「別に、ないこともない。」
「でも、この年になって、お坊ちゃまをやるのも――三日も続かんのが、乞食と居候の性分なんだよな。」
「その、あふれるほどの才能と、類まれな剣術の腕を持ちながら――。」
「おっと、煽りやがって。」
「そうやって年中ぶらぶらしてるのは――どこか具合でも悪いんですか?」
「ううん、どこも悪くない。ただ、酒が飲みたいだけ。それが、病気といえば病気かな。」
「だからこそ、ここで奮起して、千阪様に認められて、上杉家に雇われて、いい給料をもらって、美味しいお酒を存分――って、俺は提案してるわけです。どうですか。」
「それも、そうだなぁ。」
「わかってるでしょ。人は、飯を奢ってくれる人のためなら、何でもする。いや、しなきゃいけないようになってるんだ。それを忠義って言うんだよ。ほら、赤穂の浪人がうるさい謀略をするのも忠義なら、それを阻止しなきゃいけない俺たちも忠義だ。忠義と忠義のぶつかり合い。ほんと、辛いわ世の中だよなぁ――よっこいしょ、と。」
「行きますよ。」
「どこへ、兄貴――。」
「兄者、兄者って、兄貴を売りに行こうって言うのか――止めるな。」
「フフフ、止めませんよ。」
「どこへ行く? って、言わずもがなだろ。隠密をするんだよ。あんまり性に合ってない役回りだけどね。」
「ということは、どこかに心当たりがあるんですか――。」
「そんなものねえよ。」
「でも、犬も歩けば棒に当たる。じゃあな。」
「通るぞ。雑魚め!」

原文 (会話文抽出)

「ちょ、ちょっと待った! 腹の空いておったときにいったことは、言質にならんぞ。」
「かねがねおすすめしてあるとおりに、これを機会に、千阪様に知られて、小林殿の取り持ちで、上杉家へ仕官なさるお気はないのか。」
「ないことも、ない。」
「が、この年齢になって、宮仕えというのも――三日やると、止められんのが、乞食と居候の味でな。」
「その、ありあまる才幹と、不世出の剣腕とをもちながら――。」
「や! こいつ、煽てやがる。」
「そうして年が年中ぶらぶらしておられるのは――いったい、どこかお身体でもお悪いのか。」
「ううむ。どこも悪うはない。ただ、酒が呑みたい。これが、病いといえば、病いかな。」
「さ、ですから、ここで一つ働きを見せて、千阪様に認められ、上杉家に抱えられて、相当の禄を食み、うまい酒をたんまり――と、拙者は、こう申し上げるので。いかがでござる。」
「それも、そうだな。」
「わかっておるよ。人間、食わしてくれるやつのためには、何でもする。いや、何でもせんければならんことに、なっておるのだ。これを称して忠義という。なあ、赤穂の浪人どもが、小うるせえ策謀をしておるのも、忠義なら、それを防がにゃならんこっちも、忠義だ。忠義と忠義の鉢合わせ。ほんに、辛い浮世じゃないかいな、と来やがらあ――どっこいしょっ、と。」
「まいるぞ。」
「どこへ、兄者――。」
「兄者、兄者と、兄者を売りに来てやしめえし――停めるな。」
「うふっ、留めやしません。」
「いずくへ? とは、はて知れたこと。隠密に出るのだ。あんまり、柄に適った役割りでもねえがの。」
「というと、いずれかの方面に、何かお心当りでもおありなので――。」
「ねえんだよ、そんなものあ。」
「だが、犬も歩けば棒に当たる。あばよ。」
「通るぞ。雑魚一匹!」

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