林不忘 『口笛を吹く武士』 「だいぶ物ものしいですな。」…

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青空文庫図書カード: 林不忘 『口笛を吹く武士』

現代語化

「物々しいですね。」
「この裏門の前にある雑貨屋、知ってますか?」
「米屋五兵衛ってやつですよね――あれは前原っていう人で赤穂の浪士だって密告してきたやつがいるらしいです。」
「またですか。私はまた、この本所の万屋にいる小豆屋善兵衛ってやつが赤浪の化け物だって聞きました。確か、かんざし四五郎とか五五郎とか――でも、バカげてるでしょ。そんなあちこちに赤浪が潜んでるわけないじゃないですか。そんなこと言ったら、出入りしてる商人や御用聞きも全部赤浪になっちゃうし、あなたこそ、赤穂浪士の偉い人なんじゃないっすか?アハハハハ、いや、騒ぎすぎ騒ぎすぎ――。」
「ほら、ここにありますよ。前原伊助宗房、中小姓、兼金奉行、十石三人扶持――。」
「清水一角、ってのは偽名ですよね。本当は浅野内匠頭長矩家来――とか言い出すんでしょうね、この調子だと。アハハハ。」
「ふーん。で、この前原ってやつが裏門前の米屋だっていう証拠はあるんですか?あるなら、今夜にも切り捨てちゃいますけど。」
「ちょっと待って。こっちは今、星野に探りを入れてるから。」
「じゃあ、その報告を待ってからにするとして――でも、ちょっとみんな神経質になりすぎてる気がしませんか?」
「でも、清水さん、年末が近づいたからか、何か世の中が騒がしくなってきたよね。」
「言われてみれば、」
「そろそろ何かあるかもしれないですよ。」
「うん。それでね。」
「あなたの兄さんの狂太郎さん、ぜひあの狂太郎さんに出てもらいたいと思っていて――。」
「兄貴! 兄貴――!」
「兄貴! またかよ。夜も昼も飲んでばっかで、困った奴だよもう。」

原文 (会話文抽出)

「だいぶ物ものしいですな。」
「この、裏門のまえに、雑貨商があるな。御存じかな?」
「米屋五兵衛とかいう――あれは、前原といって、赤穂の浪士だと密告して来たものがあるが。」
「またですか。私はまた、この本所の万屋で小豆屋善兵衛というやつ、それがじつは、赤浪の化けたのだと聞かされたことがあります。たしか、かんざし四五郎とか、五五郎とか――しかし、埓もない。そうどこにも、ここにも、赤浪が潜んでおってたまるものですか。そんなことをいえば、出入りの商人や御用聞きも、片っ端から赤浪だろうし、第一、そういうあなたこそ、赤穂浪士の錚々たるものかも知れませんな、あっはっはっは、いや、風声鶴唳、風声鶴唳――。」
「ほら、ここにある。前原伊助宗房、中小姓、兼金奉行、十石三人扶持――。」
「清水一角、とはこれ、世を忍ぶ仮りの名。何を隠そう、じつを申せば浅野内匠頭長矩家来――などということに、そのうちおいおいなりそうですな、この分ですと。はっはっは。」
「ふうむ。で、この前原というのが、あのうら門まえの米屋だという確証は、挙がっているのですな。それなら、今夜にでも、ぶった斬ってしまいますが。」
「まあ、待て。こっちのほうは、いま星野に命じて探りを入れさせている。」
「では、その報告を待ってからのことに――だが、どうも私は、皆すこし、神経過敏になっているように思う。」
「しかし、清水、暮れに近づいたせいか、何かこう、世上騒然としてまいったな。」
「そういわれると、」
「近いうちにあるかもしれませんな、これは。」
「うむ。それについてだ。」
「君の兄貴の狂太郎君、ぜひあの狂太郎君の出馬を仰ぎたいと思ってな――。」
「兄者、兄者っ――!」
「兄者! またか。夜も昼も食べ酔って、困った仁じゃなどうも。」

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