芥川龍之介 『山鴫』 「村の子供たちは面白いよ。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『山鴫』

現代語化

「田舎の子供って面白いよ。」
「そんなやつらの言葉聞いてると、俺らには考えもつかない、ストレートな言い回しを教えてもらえることがあるんだ。」
「この間もそういうやつらを教えてたら、――」
「いきなり一人が、教室から飛び出そうとするんだ。それでどこに行くのか聞いてみたら、チョークを食べ欠きに行くんですって言うんだ。もらってくる、とか折ってくる、とかじゃなくてね。食べ欠きに行くって言ったんだよ。そういう言葉を使えるのって、実際にチョークかじってるロシアの子供くらいだろ。俺たち大人は絶対使えないよ。」
「なるほど、これはロシアの子どもにしか無理そうだ。それに俺なんかはそんな話聞くと、しみじみロシアに帰ってきた気分になるよ。」
「そうだよな。フランスじゃ子どもまでが、タバコくらい普通のことなくらうぜ。」
「そういえば先生も最近、全然タバコ吸ってないみたいですね。」
「ああ、すっかりやめたんだよ。パリに美人な人が2人いてさ、その人たちが俺がタバコ臭いと、キスさせないって言うんだ。」

原文 (会話文抽出)

「村の子供たちは面白いよ。」
「ああ云ふ連中の言葉を聞いてゐると、我々には思ひもつかない、直截な云ひまはしを教へられる事がある。」
「この間もああ云ふ連中を教えてゐると、――」
「いきなり一人、教室を飛び出さうとする子供があるのだね。そこで何処へ行くのだと尋いて見たら、白墨を食ひ欠きに行くのですと云ふのだ。貰ひに行くとも云はなければ、折つて来るとも云ふのではない。食ひ欠きに行くと云ふのだね。かう云ふ言葉が使へるのは、現に白墨を噛じつてゐる露西亜の子供があるばかりだ。我々大人には到底出来ない。」
「成程、これは露西亜の子供に限りさうだ。その上僕なぞはそんな話を聞かされると、しみじみ露西亜へ帰つて来たと云ふ心持がする。」
「さうだらう。仏蘭西なぞでは子供までが、巻煙草位は吸ひ兼ねない。」
「さう云へばあなたもこの頃は、さつぱり煙草を召し上らないやうでございますね。」
「ええ、すつかり煙草はやめにしました。巴里に二人美人がゐましてね、その人たちは私が煙草臭いと、接吻させないと云ふものですから。」


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