林不忘 『寛永相合傘』 「降るな。」…

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青空文庫図書カード: 林不忘 『寛永相合傘』

現代語化

「雨降ってきたな。」
「うん。天気が変わりやすい時期だからね。」
「これで一気に暑くなるだろう。」
「暑くなるだろうね。」
「おーい、水たまりがあるぞ。」
「うん。ここはどこだっけ?」
「芝口だよ。」
「芝口か。」
「うん。」
「お前、濡れないのか。傘をこう――。」
「いやいや。これでいい。それよりお前こそ濡れないのか?」
「大丈夫だよ。」
「よく降るな。」
「よく降るな。」
「この辺の景色――どうだ、城下町の端っこみたいじゃないか。暗くてよく見えないけど。」
「そうだね。言えばそうだ。あの、なんていうお稲荷さんがあった――。」
「ぼた餅稲荷だろう?」
「そうそう、ぼた餅稲荷の森から小川に沿って鼓ヶ原に出ようとするあたり、あの辺は何て言ったっけな。青柳町じゃないけど――。」
「青柳町は下で、甲子神社があるところだよ。」
「じゃあ、あそこは――。」
「――――」
「――――」
「青、――。」
「青物町!」
「八百屋町!」
「そうそう、八百屋町、八百屋町。随分変わっただろうな、あの辺も。」
「ずっと行ってないからね。」
「ずっと行ってないからね。」
「お! 甲子神社といえば、お前、覚えてるか?」
「何を?」
「あそこのね、あの娘――。」
「娘?」
「うん。顔が丸くて、目が細くて、よく泣いてた――。」
「お留か?」
「おう! そう、お留坊、神官の娘だよ。」
「大きくなっただろうなあ。」
「結婚して子供もいるらしいよ。」
「え! もうそんな歳なんだ。」
「そりゃそうだろ、あの頃稚児髷だったんだからなあ――アハハハ。」
「何だ、急に笑いだして。」
「アハハハハ、いや、思い出したんだ。昔あそこの庭に柿の木があって――。」
「うんうん、あった、あった! 大きな実がなったよな。よくお前と盗み食いしたじゃないか。」
「いつかお前が、アハハハハ、木から落ちて、アハハハハ。」
「そうそう、アハハ、泣いたな、あの時は。」
「泣いた泣いた。それで俺が、武士の子はどんなに痛くても泣くべきじゃないって言うと、お前、何て答えたか、あれだけはよく覚えてるぞ。」
「何て答えたっけ?」

原文 (会話文抽出)

「降るな。」
「うん。陽気のかわり目だからな。」
「これでずんと暑くなるだろう。」
「暑くなるだろう。」
「おい、水たまりがあるぞ。」
「うん。ここはどこだ。」
「芝口だ。」
「芝口か。」
「うん。」
「貴公、濡れはせぬか。傘をこう――。」
「いやいや。これでよい。それより貴公こそ濡れはせぬか。」
「なんの。」
「よく降るな。」
「よく降るな。」
「ここらの景色――どうだ、城下はずれに似ておるではないか。暗くてよくは見えぬが。」
「さよう。そういえばそうだ。あの、何とかいう稲荷のある――。」
「ぼた餅稲荷であろう。」
「そうそうぼた餅稲荷の森から小川にそうて鼓ヶ原へ抜けようとするあたり、あの辺は何と言ったけな。青柳町ではなし――。」
「青柳町は下で、甲子神社のあるところじゃ。」
「すると、あそこは――。」
「――――」
「――――」
「青、――。」
「青物町!」
「八百屋町!」
「そうそう、八百屋町、八百屋町。ずいぶん変ったろうな、あのへんも。」
「久しく行かんからな。」
「久しく行かんからな。」
「お! 甲子神社と言えば、貴公、おぼえているか。」
「何を。」
「あそこのそら、そら、あの娘――。」
「娘?」
「うん。顔の丸い、眼の細い、よく泣きおった――。」
「お留か。」
「おう! それそれ、お留坊、神官の娘でな。」
「大きゅうなったろうなあ。」
「嫁に行って子まであるそうじゃ。」
「え! もうそんな年齢か。」
「そりゃそうだろう、あのころ稚児髷だったからなあ――はっはっは。」
「何じゃ、不意に笑い出して。」
「はっはっはっは、いや、思い出したぞ。いつかそらあそこの庭に柿の木があって――。」
「うんうん、あった、あった! 大きな実が成ったな。よく貴公と盗りに行ったではないか。」
「いつか貴公が、ははははは、木から落ちて、ははははは。」
「そうそう、ははは、泣いたな、あの時は。」
「泣いた泣いた。それで俺が、武士の子は痛くとも泣くものではないと言うたら、貴公、何と答えたか、これは記憶えていまいな。」
「なんと答えた?」

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