GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『海のほとり』
現代語化
「ああいう商売も大変だよね」
「ええ、本当に大変ですよ。何しろ沖に泳いで行って、何度も海の底に潜ったりするんですからね」
「おまけに航路に流されたら、助かる確率は10のうち2、3ですよ」
「そ言えばHさん、あれはいつでしたっけ? ながらみ取りの幽霊が出るって言ったのは?」
「去年――いや、一昨年の秋だ」
「本当に出たんですか?」
「幽霊じゃなかったんです。でも幽霊が出るって言ってたのは磯臭い山の陰の卵塔場で、おまけにそのまたながらみ取りの死体はエビだらけになって上がったもんですから、誰でも最初は信じなかったにしろ、気味悪がってたことは確かなんです。そのうちに海軍の兵曹上りの男が夜から卵塔場に張り込んでいて、ついに幽霊を見つけたんです。つかまえてみたら、ただそのながらみ取りと夫婦約束をしていたこの町の達磨茶屋の女だったんです。それで一時、火が燃えたり人が呼んだりする声が聞こえたりして、ずいぶん大騒ぎしたんですよ」
「じゃぁその女は別に人を驚かそうと思って来てたわけじゃないんだ?」
「ええ、ただ毎晩12時前後にながらみ取りの墓の前に来て、ぼんやり立ってただけなんです」
原文 (会話文抽出)
「風呂にお出で」
「ああ言う商売もやり切れないな。」
「ええ、全くやり切れませんよ。何しろ沖へ泳いで行っちゃ、何度も海の底へ潜るんですからね。」
「おまけに澪に流されたら、十中八九は助からないんだよ。」
「そら、Hさん、ありゃいつでしたかね、ながらみ取りの幽霊が出るって言ったのは?」
「去年――いや、おととしの秋だ。」
「ほんとうに出たの?」
「幽霊じゃなかったんです。しかし幽霊が出るって言ったのは磯っ臭い山のかげの卵塔場でしたし、おまけにそのまたながらみ取りの死骸は蝦だらけになって上ったもんですから、誰でも始めのうちは真に受けなかったにしろ、気味悪がっていたことだけは確かなんです。そのうちに海軍の兵曹上りの男が宵のうちから卵塔場に張りこんでいて、とうとう幽霊を見とどけたんですがね。とっつかまえて見りゃ何のことはない。ただそのながらみ取りと夫婦約束をしていたこの町の達磨茶屋の女だったんです。それでも一時は火が燃えるの人を呼ぶ声が聞えるのって、ずいぶん大騒ぎをしたもんですよ。」
「じゃ別段その女は人を嚇かす気で来ていたんじゃないの?」
「ええ、ただ毎晩十二時前後にながらみ取りの墓の前へ来ちゃ、ぼんやり立っていただけなんです。」