新美南吉 『うた時計』 「廉坊、おまえは村から、ここまできたのか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 新美南吉 『うた時計』

現代語化

「廉、村から来たの?」
「うん」
「さっき、村から男の人が出てきたけど、一緒じゃなかった?」
「一緒だったよ」
「おや、その時計、どうしたの?」
「その人が、間違えておじさんの家から持ってきたから、返しといてって言われたの」
「返しといて?」
「うん」
「そうか、あのバカが」
「あれって、誰なの?」
「あれは」
「うちの周作だ」
「え、本当?」
「昨日、10年ぶりにうちに帰ってきたんだ。悪いことばっかりしてたけど、今度こそ改心して、まじめに工場で働くって言うから、一晩泊まらせたんだ。そしたら朝、俺が知らない間に、また悪いクセが出たみたいで、この時計を2つ持って出かけてやがった。あのろくでなしめ」
「でもおじさん、間違えて持ってきたみたいだよ。本当に盗むつもりじゃなかったみたい。僕に、『人間は清廉潔白でなくちゃダメだ』って言ってた」
「そうかい…そんなこと言ってたのか」

原文 (会話文抽出)

「廉坊、おまえは村から、ここまできたのか」
「うん」
「そいじゃ、いましがた、村からだれか男の人が出てくるのと、いっしょにならなかったか」
「いっしょだったよ」
「あッ、そ、その時計、おまえはどうして……」
「その人がね、おじさんの家でまちがえて持ってきたから、返してくれっていったんだよ」
「返してくれろって?」
「うん」
「そうか、あのばかめが」
「あれ、だれなの、おじさん」
「あれか」
「あれは、うちの周作だ」
「えッほんと?」
「きのう、十なん年ぶりで、うちへもどってきたんだ。ながいあいだ悪いことばかりしてきたけれど、こんどこそ改心して、まじめに町の工場ではたらくことにしたから、といってきたんで、ひと晩とめてやったのさ。そしたら、けさ、わしが知らんでいるまに、もう悪い手くせを出して、このふたつの時計をくすねて出かけやがった。あのごくどうめが」
「おじさん、そいでもね、まちがえて持ってきたんだってよ。ほんとにとっていくつもりじゃなかったんだよ。ぼくにね、人間は清廉潔白でなくちゃいけないっていってたよ」
「そうかい。……そんなことをいっていったか」


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