新美南吉 『うた時計』 「坊、ひとりでどこへいくんだ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 新美南吉 『うた時計』

現代語化

「坊や、1人でどこに行くんだい?」
「街だよ」
「坊や、なんて名前だ?」
「れんていうんだ」
「れん? れん平か?」
「うん」
「じゃあ、れん一か?」
「そうじゃないよ、おじさん。ただね、れんていうのさ」
「ふうん。どういう字を書くんだ?連絡の連か?」
「違う。点を打って、一を書いて、ノを書いて、2つ点を打って……」
「難しいな。おじさんは、難しい字は知らないよ」
「廉」
「ふうん、難しい字だな、やっぱり」
「これね、おじさん、清廉潔白の廉だよ」
「なんだい、そのセイレンケッパクてのは?」
「清廉潔白というのは、悪いことを何もしていないので、神様の前に出ても、警察につかまっても、平気だということだよ」
「ふうん、警察につかまってもか」
「おじさんのコートのポケット、大きいね」
「うん、そりゃ、大人のコートは大きいから、ポケットも大きいさ」
「あったかい?」
「ポケットの中かい?そりゃあ、あったかいよ。ぽこぽこだよ。コタツが入ってるみたいなんだ」
「僕、手を入れてもいい?」
「変なことを言う子だな」
「入れたっていいよ」
「なんだ、ちっとも暖かくないね」
「はは、そうかい」
「僕たちの学校の先生は、もっと温かいよ。朝、僕たちは学校に行くとき、順番に先生のポケットに手を入れるんだ。木山先生って言うんだ」
「そうかい」
「おじさんのポケット、なんか、硬くて冷たいものが入ってるね。これなに?」
「なんだと思う?」
「お金でできてるね……大きいね……何か、ネジみたいなもが付いてるね」

原文 (会話文抽出)

「坊、ひとりでどこへいくんだ」
「町だよ」
「坊、なんて名だ」
「れんていうんだ」
「れん? れん平か」
「ううん」
「じゃ、れん一か」
「そうじゃないよ、おじさん。ただね、れんていうのさ」
「ふうん。どういう字書くんだ。連絡の連か」
「ちがう。点をうって、一を書いて、ノを書いて、ふたつ点をうって……」
「むずかしいな。おじさんは、あまりむずかしい字は知らんよ」
「廉」
「ふうん、むずかしい字だな、やっぱり」
「これね、おじさん、清廉潔白の廉て字だよ」
「なんだい、そのセイレンケッパクてのは」
「清廉潔白というのは、なんにも悪いことをしないので、神様の前へ出ても、巡査につかまっても、平気だということだよ」
「ふうん、巡査につかまってもな」
「おじさんのオーバーのポケット、大きいね」
「うん、そりゃ、おとなのオーバーは大きいから、ポケットも大きいさ」
「あったかい?」
「ポケットの中かい? そりゃあ、あったかいよ。ぽこぽこだよ。こたつがはいってるようなんだ」
「ぼく、手を入れてもいい」
「へんなことをいう小僧だな」
「入れたっていいよ」
「なんだ、ちっともあったかくないね」
「はっは、そうかい」
「ぼくたちの先生のポケットは、もっとぬくいよ。朝、ぼくたちは学校へいくとき、かわりばんこに先生のポケットに手を入れていくんだ。木山先生というのさ」
「そうかい」
「おじさんのポケット、なんだか、かたい冷たいものがはいってるね。これなに?」
「なんだと思う」
「かねでできてるね……大きいね……なにか、ねじみたいなもんがついてるね」


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