夏目漱石 『それから』 「僕が自分で平岡君に逢つて解決を付けても宜…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『それから』

現代語化

「私が自分で平岡さんに会って決着つけてもいいですか?」
「そんなことできるの?」
「できるつもりです」
「じゃあ、どうでもいいわ」
「そうしましょう。2人で平岡さんを騙すのは良くないでしょう。もちろん事実をちゃんと納得できるように話すだけです。そして、私の悪いところはきちんと謝まるつもりです。その結果が私の思うようにならないかもしれません。でも、どんなに話がこじれても、それ以上おかしなことにはならないようにします。このように中途半端では、お互いに苦しいし、平岡さんにも悪いです。ただ私が思い切ってそうすると、あなたが平岡さんに申し訳ないだろうと思ってね。そこが気の毒なんですが、でも申し訳ないのは、私だって同じなんですよ。自分のしたことに対しては、どんなに申し訳なくても、道徳的な責任を取るべきだとすれば、他にどんなメリットがなくても、お互いの間にあることは平岡さんに話さなければいけません。それに今はこれからの自分の責任を明らかにするのが大事なんですから、なおさらそうする必要があると思います」
「よく分かりました。どうせ間違えば死ぬつもりなんですから」
「死ぬなんて――よし死ぬにしても、これから先どれくらいあるか――それに、そんな危ないことが起こるくらいなら、なんで私が平岡さんに話すものですか」
「じゃあよく謝ります」

原文 (会話文抽出)

「僕が自分で平岡君に逢つて解決を付けても宜う御座んすか」
「そんな事が出来て」
「出来る積です」
「ぢや、何うでも」
「さうしませう。二人が平岡君を欺いて事をするのは可くない様だ。無論事実を能く納得出来る様に話す丈です。さうして、僕の悪い所はちやんと詫まる覚悟です。其結果は僕の思ふ様に行かないかも知れない。けれども何う間違つたつて、そんな無暗な事は起らない様にする積です。斯う中途半端にしてゐては、御互も苦痛だし、平岡君に対しても悪い。たゞ僕が思ひ切つて左様すると、あなたが、嘸平岡君に面目なからうと思つてね。其所が御気の毒なんだが、然し面目ないと云へば、僕だつて面目ないんだから。自分の所為に対しては、如何に面目なくつても、徳義上の責任を負ふのが当然だとすれば、外に何等の利益がないとしても、御互の間に有た事丈は平岡君に話さなければならないでせう。其上今の場合では是からの所置を付ける大事の自白なんだから、猶更必要になると思ひます」
「能く解りましたわ。何うせ間違へば死ぬ積なんですから」
「死ぬなんて。――よし死ぬにしたつて、是から先何の位間があるか――又そんな危険がある位なら、なんで平岡君に僕から話すもんですか」
「ぢや能く詫ります」


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