夏目漱石 『それから』 「代さん、あなたは不断から私を馬鹿にして御…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『それから』

現代語化

「代さん、あなたはいつも私をバカにしてるわ。――いや、嫌味じゃなくて事実なのよ。仕方がないわよね」
「困りますよ、そんなに真剣に問い詰められては」
「いいのよ。ごまかさないでよ。ちゃんと分かってるんだから。だから正直にそうだと言ってちょうだい。そうでないと話ができないから」
「そうですか。ほらね。でも、それが当然よ。気にしないわ。私が偉そうに振る舞ったところで、あなたにはかないませんもの。私とあなたはずっと同じ関係で、お互いに満足してるんだから、文句はないわ。それとして、あなたはご両親もバカにしてるんでしょ」
「ええ、少しはバカにしてます」
「お兄さんもバカにしてるんでしょ」
「兄さんは?兄さんはすごく尊敬してますよ」
「嘘を言わないでよ。せっかく打ち解けてるんだから、全部言っちゃいなさい」
「まあ、ある意味ではバカにしてないわけではないけど」
「ほら、 видите。あなたは家族全員バカにしてるわ」
「恐れ入りました」
「そんな言い訳はどうでもいいのよ。あなたからしてみれば、みんなバカにされるだけの価値があるんだろうから」
「もう、やめましょうよ。今日はずいぶんシビアですね」
「本当なのよ。それでいいのよ。ケンカも何も起きないんだから。でもね、そんなに偉いあなたが、なんで私みたいなものからお金を借りる必要があるの?おかしいじゃない?いや、揚げ足を取ってると思われると腹が立つでしょうけど、そうじゃなくて。それくらい偉いあなたでも、お金がないと、私みたいな者に頭を下げなきゃならなくなっちゃうってことよ」
「だから前から頭を下げてるじゃないですか」
「まだ本気で聞いてないのね」
「これが私の本気なんです」
「じゃあ、それもあなたの偉いところかもしれない。でも、誰もあなたにお金を貸してくれなくて、今のお友達を助けてあげることができなかったら、どうするの?偉くてもダメじゃない?無能なのはタクシー運転手と同じよ」

原文 (会話文抽出)

「代さん、あなたは不断から私を馬鹿にして御出なさる。――いゝえ、厭味を云ふんぢやない、本当の事なんですもの、仕方がない。さうでせう」
「困りますね、左様真剣に詰問されちや」
「善ござんすよ。胡魔化さないでも。ちやんと分つてるんだから。だから正直に左様だと云つて御仕舞なさい。左様でないと、後が話せないから」
「でせう。そら御覧なさい。けれども、それが当り前よ。ちつとも構やしません。いくら私が威張つたつて、貴方に敵ひつこないのは無論ですもの。私と貴方とは今迄通りの関係で、御互ひに満足なんだから、文句はありやしません。そりや夫で好いとして、貴方は御父さんも馬鹿にして入らつしやるのね」
「えゝ、少しは馬鹿にしてゐます」
「兄さんも馬鹿にして入らつしやる」
「兄さんですか。兄さんは大いに尊敬してゐる」
「嘘を仰しやい。序だから、みんな打ち散けて御仕舞なさい」
「そりや、或点では馬鹿にしない事もない」
「それ御覧なさい。あなたは一家族中悉く馬鹿にして入らつしやる」
「どうも恐れ入りました」
「そんな言訳はどうでも好いんですよ。貴方から見れば、みんな馬鹿にされる資格があるんだから」
「もう、廃さうぢやありませんか。今日は中中きびしいですね」
「本当なのよ。夫で差支ないんですよ。喧嘩も何も起らないんだから。けれどもね、そんなに偉い貴方が、何故私なんぞから御金を借りる必要があるの。可笑しいぢやありませんか。いえ、揚足を取ると思ふと、腹が立つでせう。左様なんぢやありません。それ程偉い貴方でも、御金がないと、私見た様なものに頭を下げなけりやならなくなる」
「だから先きから頭を下げてゐるんです」
「まだ本気で聞いてゐらつしやらないのね」
「是が私の本気な所なんです」
「ぢや、それも貴方の偉い所かも知れない。然し誰も御金を貸し手がなくつて、今の御友達を救つて上げる事が出来なかつたら、何うなさる。いくら偉くつても駄目ぢやありませんか。無能力な事は車屋と同なしですもの」


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