夏目漱石 『それから』 「身体は丈夫だね」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『それから』

現代語化

「体が丈夫だね」
「ここ2、3年風邪もひいてません」
「頭も悪くないだろう。学校の成績もよかったんじゃないか」
「まあそうだな」
「それなら遊んでるのはもったいない。あの何とか言ったっけ?そうだ、よくお前の家に遊びにきてた男がいるだろ。私も一度か二度会ったことがある」
「平岡ですか?」
「そうそう、平岡。あの人は頭はあまりよくなかったそうだけど、卒業したらすぐに就職したじゃないか」
「その代わり失敗して、もう帰ってきちゃいましたよ」
「どうして?」
「要するに食べるために働いたからでしょ」
「何か悪いことでもしたのかな?」
「その時々で当然のことをするんだけど、その当然がやっぱり失敗になっちゃうんですかね」
「なるほど」
「若い人はよく失敗するって言うけど、本当に誠実と熱意が足りないからだ。私も長年の経験で、ここまでやってきたけど、どうしてもこの二 つがないと成功しないよ」
「誠実と熱意があっても、かえって失敗することもあるんじゃないですか?」
「いや、それはないな」

原文 (会話文抽出)

「身体は丈夫だね」
「二三年このかた風邪を引いた事もありません」
「頭も悪い方ぢやないだらう。学校の成蹟も可なりだつたんぢやないか」
「まあ左様です」
「夫で遊んでゐるのは勿体ない。あの何とか云つたね、そら御前の所へ善く話しに来た男があるだらう。己も一二度逢つたことがある」
「平岡ですか」
「さう平岡。あの人なぞは、あまり出来の可い方ぢやなかつたさうだが、卒業すると、すぐ何処かへ行つたぢやないか」
「其代り失敗て、もう帰つて来ました」
「どうして」
「詰り食ふ為に働らくからでせう」
「何か面白くない事でも遣つたのかな」
「其場合々々で当然の事を遣るんでせうけれども、其当然が矢っ張り失敗になるんでせう」
「はあゝ」
「若い人がよく失敗といふが、全く誠実と熱心が足りないからだ。己も多年の経験で、此年になる迄遣つて来たが、どうしても此二つがないと成功しないね」
「誠実と熱心があるために、却つて遣り損ふこともあるでせう」
「いや、先ないな」


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