長塚節『土』「それでも勘次は能くするかえ」…

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青空文庫図書カード: 長塚節『土』

現代語化

「それでも勘次はよくやるよなぁ」
「あいつは、昔っからそうだからなぁ」
「おつぎはどうなの？」
「あの子はそれ、勘次とは違うんだから。何でもありったけ赤ん坊のときからのものだから」
「節挽きはたくさんありそうだけど？」
「そうだね。お通を連れてって、南で挽いてきてもらったみたいだけど。桶に入れたまま蓋をしたきりしまってあるから、私はどのくらいあるのかも見てないけど」
「勘次には柔らかいものも少しは作ってくれるかな？」
「毎日、ご飯と一緒に食べてるけどね。歯が丈夫なら硬いものでも大丈夫だけど」
「それじゃそば粉でも少しあげようかな。そば掻でも作って食べた方がいいよ。そばに打つと冷えるけど、そば掻は温まるって言うからね」

原文 (会話文抽出)

「それでも勘次は能くするかえ」
「ありや、はあ、以前つからあゝゆんだから」
「おつぎはどうだえ」
「ありやあそれ、勘次たあ違あから、何ちつても有繋赤ん坊ん時つからのがだから」
「節挽はたんとした容子かえそれでも」
「えゝ、おつうこと連れてつて、南で挽くなあ挽いたやうだが、桶さ入えた儘で蓋したつ切藏つて置くから、わしやどのつ位あるもんだか見もしねえが」
「勘次は軟かい物でも少しは拵えてくれるかね」
「えゝ、毎日同士にたべちや居んだがなあに齒せえ丈夫なら粗剛つたつて管やしねえが」
「それぢや蕎麥粉でも少し遣らうかね蕎麥掻でも拵へてたべた方が善いよ、蕎麥に打つちや冷えるが蕎麥掻は暖まるといふからね」

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