GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 長塚節 『土』
現代語化
「何のことでしょうか、お内儀さん」
「夜中にあのトウモロコシを伐らせたことだけどね。実はあの時はね、警察の方が間に合わなければあなたに盗らないとどこまでも言わせておいて、それで旦那が帰ってからのことと思ってたもんだから、そうなるとあなたが白状しても困るし、自分の畑が丸ごとなくなっても困るからね。それも今は何もそんなことしなくてもよかったようなものだけど、あの時は私もどうにかしたくてね。それだけどおつぎが度胸があったので私もびっくりしたよ」
「へぇ、私もお通に聞きました。鎌が一丁なくなってるもんだからどうしたのかと思ったら、お内儀さんが言ってるから伐ったんだって。でも鎌は笹薮の中にありましたよ」
「そうかい。どんな鎌だったのかおつぎが心配してたからね」
「いやぁ、減った鎌だから惜しくはないんですけどね」
「おつぎのことでは、そんなことでむやみに怒らないようにしてあげてね。面倒見てあげて」
「それから私もお内儀さん、こんなに一人で大変なのに、私たち夫婦も死ぬときは子どものことが心配なんです。それで私もお通が行きたがってるからお針にも通わせていますし、たすきが欲しいとか言うもんだから、私たちみたいな貧乏人には余計なものですが、赤いもの買ってあげました。それでこの騒ぎで、お内儀さんのところの小作料も持って来られなくてすみません。私が単衣物を質に入れていたものを出してあげたんですけどね。畑に出たりするにはちょっと派手すぎるんですけど、それ一枚しかないから私も放っておいてるんです。でもお内儀さん、ずいぶん汚れてますよね」
原文 (会話文抽出)
「どうしたつていふんぢやないが、此の間の晩のことを知つてるかね」
「何でがせうね、お内儀さん」
「夜中にあの蜀黍伐らせたことだがね、實はあの時はね、警察の方が間に合はなければお前に盜らないと何處までもいはして置いて、さうして旦那が歸つてからのことと思つたもんだから、それにやお前が白状して畢つても困るし、自分の畑がそつくりして居ても不味いからね、それも今に成つちや何もそんなこと仕なくつても善かつたやうなものだが、其の時は私もどうかしてと思つてね、それだがおつぎが度胸のあるのぢや私も喫驚したよ」
「へえわしもおつうに聞きあんした、鎌一挺見えねえもんだからどうしたつちつたら、お内儀さんいふから伐つたんだなんて、そんでも鎌は笹ん中に有りあんしたつけや」
「さうかい、どんな鎌だかおつぎは心配して居たからね」
「なあにはあ、減つちやつた鎌だから惜しかあねえんですがね」
「おつぎのことはそんなことでは無闇に怒らないやうにしなよ、面倒見てね」
「それからわしもお内儀さん、恁うして獨で辛抱してんでがすが、わし等嚊も死ぬ時にや子奴等こたあ心配したんでがすかんね、夫からわしもおつうが行きてえつちもんだからお針にも遣りあんすしね、襷なんぞも欲い/\つちもんだからわし等見てえな貧乏人にや餘計なもんぢやありあんすが赤えの買つて遣つたんでがさ、此さうだことしてお内儀さん處へも小作の借も持つて來ねえで濟まねえんですが、嚊が單衣物も質に入えてたの出して遣つたんでがすがね、畑へなんぞ出んのにや餘り過ぎ物なんだが、それ一枚切りだからわしも構あねえで見てんのせ、そんだがお内儀さん奇態に汚しあんせんかんね」