長塚節 『土』 「遠いんだな、其處へ行つたらどうすんだんべ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 長塚節 『土』

現代語化

「遠いんだなぁ。あそこに行ったら何をするんだ?」
「機織りをする人もいれば、農家をする人もいるよ」
「機織りはできないな」
「いいことなんてあるわけないよ。家になんて滅多に帰れないんだぞ。それで朝から晩までこき使われて、それに病気になっても大したことじゃなきゃ葉書も出させてもらえない」
「それじゃあ、そんなところに行ったらひどいな。逃げてくることもできないのかな」
「すぐに捕まえられちゃうから、そんなに逃げられないよ」
「警察に捕まえられるの?」
「そんなんじゃないよ。警察じゃなくても逃げ出せばすぐに捕まえられるように人が番してるんだよ。そうじゃなきゃ遠いところの人ばかりを頼りにするわけないでしょ」
「それでも嫌だったらどうするの?」
「嫌だと言っても、立金しないとダメなんだよ」
「どうやって払うんだそれ?」
「それはなぁ、いくら働いても途中で嫌だと言って出て行っちゃったら、借りた分の給料は全部取り戻されちゃうんだよ。それで、泣き泣き働くしかないんだ」
「それじゃあ、俺たちがあそこに行かなくてよかったな」
「だから君たちには行かせないんだよ。君たちが奉公すればそのお金で俺たちの借金もなくなるし、いいことだって曲芸師でも出してやれば楽になれるけど、親がいないと辛いって後で泣かれるのは嫌だから、俺たちは土を噛んでもそんな考えはしないんだ」
「お父さん。奉公すれば借金がなくなるんですか?」
「お母さんがいれば君たちを奉公に出して、お父さんたちも良いお金を手にできるんだけど、お母さんがいなくなって、お父さんも困っているんだ。それから君たちも奉公に行ったつもりで我慢するんだ。なぁ。俺たちは君たちをみじめには見せたくないんだからね」

原文 (会話文抽出)

「遠いんだな、其處へ行つたらどうすんだんべ」
「機織するものもあれば百姓するものもあんのよ」
「機教れぢやよかんべな」
「何でえゝことあるもんか、家へなんざあ滅多に來られやしねえんだぞ、そんで朝から晩迄みつしら使あれて、それ處ぢやねえ病氣に成つたつて餘程でなくつちや葉書もよこさせやしねえ」
「そんぢや、さうえ處へ行つちやひでえな、逃げて來ることも出來ねえんだんべか」
「直ぐ捉めえられつちあからそんなに遁げられつかえ」
「巡査に捉まんだんべか」
「さうなもんか、巡査でなくつたつて遁げ出せば直ぐ捉めえるやうに人が番してんのよ、なあ、そんでもなくつちや遠くの者ばかり頼んで置くんだもの仕やうあるもんか」
「そんでも厭だつちつたらどうすんだんべ」
「厭だなんていつた位ひでえとも立金しなくつちやなんねえから」
「どういにすんだんべそら」
「そらなあ、幾ら勤めたつて途中で厭だからなんて出つちめえば、借りた丈の給金はみんな取つくる返えされんのよ、なあ、それから泣き/\も居なくつちやなんねえのよ」
「そんぢや俺らさうえ處へ行かねえでよかつたつけな」
「そんだから汝等こた遣りやしねえ。汝こと奉公にやれば其の錢で俺ら借金も無くなるし、よきことだつて輕業師げでも出しつちめえばそれこそ樂になつちあんだが、おつかゞ無くつちや辛えつて後で泣かれんの厭だから俺ら土噛つてもそんな料簡は出さねんだ」
「おとつゝあ、奉公すれば借金なくなんだんべか」
「おつかせえ居れば汝ことも奉公に出して、おとつゝあ等もえゝ錢捉めえんだが、おつかゞ無くなつておとつゝあだつて困つてんだ、それから汝だつて奉公に行つた積で辛抱するもんだ、なあ、俺ら汝等げみじめ見せてえこたあ有りやしねんだから」


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