中里介山 『大菩薩峠』 「御免下さりませ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「「失礼します」」
「「どなたですか」」
「「生憎の雨で、さぞかし退屈でしょう」」
「「奥様でしたか。生憎の雨なので、もう1日出発を延期します」」
「「どうぞゆっくりお休みになってください。ここはあの有名な笹子峠ですから、天気のいい時でも大変な道です」」
「「明朝は駕籠をお願いします」」
「「かしこまりました。ところで、明日も雨が降ったらどうされますか」」
「「そうですね……。雨が降ったら」」
「「雨が続きそうなら、もう1日お泊まりください。ご覧のとおり山奥なので、お世辞にも良い宿とは言えませんが」」
「「でも……ちょっと急いでる用事があるので、明朝は雨が降っても峠を越えたいと思います」」
「「そうですか。では、そのように駕籠を手配しておきます」」
「「よろしくお願いします」」
「「それでは、お気をつけてお過ごしください」」
「「あの、奥さん……」」
「「はい」」
「「ちょっと伺いたいんですが、峠に行くまでに関所がありますよね」」
「「はい、駒飼というところにございます」」
「「あの、その関所は、手形がないと通してくれないんですか」」
「「それは、関所ごとに決まりがあるのです」」
「「では、関所を通らなくてもいい道ってあるんですか」」
「「関所の前を通らずにですか?」」
「「大変恐縮ですが、手形を途中で失くして困っていまして。何かいい方法はありませんか」」

原文 (会話文抽出)

「御免下さりませ」
「これはどなた」
「生憎の雨で、さだめて御退屈でいらせられましょう」
「これは御内儀でござったか。生憎の雨のこと故、もう一日、出立を見合せまする」
「どうぞ御悠りとお留まり下さりませ、なにしろ、音に聞えたこの笹子峠でござりまする、お天気の時でさえ御難渋の道でござりまする」
「明朝は駕籠を頼み申しまする」
「はい畏まりました。あの、明朝はこのように雨が降りましても、やはり御出立でござりますか」
「左様……雨が降っては」
「雨が続きましたら、もう一日御逗留なさいませ、ごらんの通りの山家、お構い申し上げることはできませんけれど」
「しかし……ちと急ぐこともある故、もし明朝は雨が降っても峠を越したいと思いまする」
「左様でござりまするか。左様ならばそのように駕籠を申しつけておきましょう」
「よろしく頼みまする」
「それではそのおつもりで……どうぞ御悠りと」
「あの、御内儀……」
「はい」
「ちとお尋ね致したいが、あの峠へかかるまでにお関所がありましたな」
「はい、駒飼と申すところにお関所がござりまする」
「あの、その関所は、手形が無くては通してくれまいか」
「それはあなた様、お関所にはどちらにもお関所の御規則がありまして」
「それをどうぞして、抜けて通る路はあるまいか」
「あの、お関所の前をお通りなされずに?」
「粗忽千万のことながら、その手形というものを途中で失うて困難の身の上、何と御内儀、よい知恵はござるまいか」


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