中里介山 『大菩薩峠』 「列席のおのおの方にもさだめてお聞きづらい…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「「ここにいる皆さんも聞きづらいだろうけど、前に言った通り、これを無視したり見逃したりしたら、俺たちの旗本の名誉が台無しになる。だから、言いにくいけど言う。皆さんも聞きづらくても聞いてくれ。さて、殿様、駒井様、ここで言ってもいいですよね」」
「「もちろんだ。旗本の名誉がなくなるほどの大事なら、遠慮はいらない。はっきりと聞こう」」
「「じゃ、言います。最近、城内で偉い役人が、身分違いの女を愛してるって噂があります」」
「「何だと」」
「「身分違いの女をめちゃくちゃ可愛がって、妻みたいな扱いをしているらしい」」
「「ははは、何のことだと思えば、家庭のちょっとしたことじゃないか。そんなことはこの場で言うべきことじゃないだろ」」
「「その本人にとっては家庭のちょっとしたことかもしれないけど、武士としての体面からしたら、決してちょっとしたことじゃない。皆さんに聞きたいです。例えば、旗本の身分の者が、賤しい女を妻にしたり妾にしたりして、それに夢中になって世間に後ろ指さされたら、それは家庭のちょっとしたことで済むと思いますか。それと、そういう人が上に立つと、下にいる人からバカにされずに済むと思いますか。これが大したことじゃなければ、もう武士と賤人の区別はなくなって、武士道の根本が崩れてしまいますよ」」
「「いい加減にしろ」」

原文 (会話文抽出)

「列席のおのおの方にもさだめてお聞きづらいことでござろうけれど、さいぜんも申す通り、これを聞捨てに致し見捨てに致す時は、我々旗本の名誉が地に落つる、それ故、言い難きを忍んで申し上げる、おのおのにもお聞きづらきを忍んでお聞き下されたい。さて、御支配、駒井殿、ここでそれを申しても苦しうござりますまいか」
「勿論のこと、旗本の名誉が地に落つるというほどの重大事ならば、誰に遠慮も要らぬ、明白に承りたい」
「しからば申し上げる、近頃、この城中の重き役人にて、身分違いの女を愛する者があるやに専らの噂」
「なんと申さるる」
「身分違いの女子を寵愛して、妻妾の位に置くものがあるとやら」
「ははは、何事かと思えば家庭の一小事、そのようなことはこの席に持ち出すべきものでござるまい」
「その人にとっては家庭の一小事か知らねど、武士の体面よりすれば、なかなか一小事ではござらぬ。いかにおのおの方に承りたい、たとえば旗本の身分の者が、仮りにほいと賤人の女を取って妻妾となし、それにうつつを抜かして世の人に後ろ指ささるるようなことがあらば、それが家庭の一小事で済まされようや、また左様な人物が上に立つ時に、いかで下々の侮りがなくて済もうや、これが一大事でなければ、もはや武士とほいと賤人との区別はない、士風の根本が崩れ申す」
「これでもか」


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