中里介山 『大菩薩峠』 「して、いま我々が厄介になっている家の主人…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「ちなみに、俺たちが今お世話になってる家の主人の名前は?」
「小泉です」
「小泉……間違いないよな?」
「この際、そんな疑いを」
「八幡村の小泉家――そこに、俺も、お前も、今までお世話になってたのか?」
「それがどうしましたか?」
「小泉の旦那さんは、俺のことも、お前のことも全部知ってて世話してくれてるのか?」
「いいえ、私のことは知ってますけど、あなたのことは知りません」
「それを知らずにこうやって、匿ってくれてるのか?」
「そうです」
「お銀さん、お前の家は甲州でも有名な大家だって聞いたよ」
「今さらそんなことをお聞きになるのは?」
「お前はここから実家へ帰ってくれ」
「どうしてですか?」
「小泉の旦那さんに頼んで、実家で謝罪して帰って。今すぐ」
「私に帰れとおっしゃるんですか?私一人を有野村に帰そうとなさるんですか?」
「命が惜しいと思うなら、一刻も早く帰れ。命が惜しくないなら……にしても帰ったほうがいい」
「何のことだかわかりません」
「わからないうちに帰れ。危ない。このままじゃ、お前も悪女になる」
「悪女って何ですか?」
「「悪女大姉、二十一、酉年生まれの女」が今思い当たった」
「あなたのお言葉が、ますますわからなくなりました」
「わかるまい。「悪女大姉、二十一、酉年生まれの女」というのは、俺も今までわからなかった」
「あれはどういうわけだったんですか?」
「あれはね」
「はい」
「あれは、人に殺された女だ」
「かわいそうに。どうして殺されちゃったんですか?」
「お前がしたようなことをしたんだ」
「私がしたようなことって?」
「男の魂を奪って、自分のものしようとしたからだ」
「私はそんなことしてないですよ」
「いずれわかるさ」

原文 (会話文抽出)

「して、いま我々が厄介になっている家の主人の名は」
「小泉と申します」
「小泉……それに違いないか」
「いまさら、そのような御念を」
「八幡村の小泉家――そこへ、拙者も、お前も、今まで世話になっていたのか」
「それがどうかなさいましたか」
「小泉の主人というのは、拙者の身の上も、お前の身の上もみんな承知で世話をしているのか」
「いいえ、わたしの身の上は知っておりますけれど、あなたのことは少しも」
「それと知らずにこうして、隠して置いてくれるのか」
「左様でございます」
「お銀どの、そなたの家は甲州でも聞えた大家であるそうじゃ」
「改めて左様なことをお聞きになりますのは?」
「お前はここからその実家へ帰ってくれ」
「まあ、何をおっしゃいます」
「小泉の主人に頼んで、実家へ詫びをして帰るがよい、今のうちに」
「わたしに帰れとおっしゃるのでございますか、わたし一人を有野村へ帰してしまおうとなさるのでございますか」
「生命が惜しいと思うならば、一刻も早く帰るがよい、もし生命が惜しくないならば……それにしても帰るがよい」
「何のことやらさっぱりわかりませぬ」
「わからないうちに帰るがよい、危ないことじゃ、これから先へ行くと、お前も悪女になる」
「悪女とは?」
「悪女大姉、二十一、酉の女がいま思い当ったよ」
「あなたのお言葉が、いよいよわたしにはわからなくなりました」
「わかるまい、悪女大姉、二十一、酉の女というのは、拙者にも今までわからなかった」
「あれはどうしたわけなのでございます」
「あれはな」
「はい」
「あれは、人に殺された女よ」
「かわいそうに。そうしてどんな悪いことをしましたの」
「お前がしたような悪いことをした」
「妾がしたような悪いこととは?」
「男の魂を取って、それを自分のものにしようとしたからだ」
「妾はそんなことは致しませぬ」
「いまに思い知る時が来る」


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