中里介山 『大菩薩峠』 「友さん、いつお前江戸を立ってどうして甲府…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「米友さん、いつ江戸を出たんです?なんで甲府に来たの?来るんだったらいつ来るか知らせてくれたらよかったのに」
「冗談言うなよ。飛脚屋に頼んでも、お前の居場所がわかんねえんだから。俺たち、すごい心配したんだぜ。ほら、他の軽業の連中はみんな帰ってきたでしょ?なんかこっちで揉め事があったんだって?でもみんな無事に帰ってきて、両国でまた看板上げてんのに、お前だけ帰ってこないんだ。どうなったのか、さっぱりわかんねえから、あの小屋まで聞きに行ったんだ。行ってみるとどうだ、あの黒ん坊の失敗のせいで、今でもあの親方が俺らにいい顔しないでよ。それで追い出されて腹が立ったけど、我慢してあの宿屋に帰って。それからこっちに来る人がいたから、その人の付き添いで連れてきてもらったんだけど、その話は長いんだ」
「私も米友さん、何回も死にかけたりして大変だったのよ。でもムクがいたり、優しい人に助けられたりして、今はね、この屋敷でだいぶ偉くなってんの。その間も、米友さんのことずっと心配してた。何とかして居場所を知らせたくて、手紙を書いてあの両国の宿屋に2回くらい届けさせたけど、全然返事がなくて困ってた」
「俺たちはその後、あの宿屋にばっかりいたわけじゃないんだ。まあ、ゆっくり話すよ。とりあえず会えただけでも文句ねえけどね。でも気の毒なのはこの人なんだ。どこでどんな人なのかわかんねえけど、口が全く利けねえんだ。ムクに案内されて、俺たちが天満宮の後ろの森の洞穴から見つけたんだ。途中で意識なくなって死んじゃうかと思ったけど、急所を刺激してやったら、なんとか持ち直した。このままなら命は助かるだろう。口が利けるようになれば言うことねえんだけど」
「明日になったらお医者さん呼んであげましょう。今日は寒くないようにしてあげて……米友さん、夜遅いからもうここでおやすみ。私も部屋に帰って寝るわ。また明日ゆっくり話しましょうよ。明日だけじゃなく、これからはずっと一緒にいましょう。もうこんな風に離れて苦労しないでね」

原文 (会話文抽出)

「友さん、いつお前江戸を立ってどうして甲府へ来たの。来るならば来るように、飛脚屋さんにでも頼んで沙汰をしておいてくれればいいに」
「冗談言っちゃあ困る、飛脚屋に頼むにもなんにも、からきりお前の居どころが知れねえじゃねえか、それがためにずいぶん俺らは心配したぜ。ほら、ほかの軽業の連中はみんな帰って来たろう、何かこっちで揉め事があったとやらだが、でもみんな無事に帰って来て、両国でまた看板を上げてるのに、お前ばかりは帰って来ねえんだ。どうなったか、さっぱり様子がわからねえから、俺らはあの小屋まで聞きに行ったんだ。聞きに行くとお前、いつかの黒ん坊の失策があるだろう、それがために今でもあの親方が俺らをよく思っていねえんだ、それで追い払われちまったから腹が立ってたまらねえけれど、我慢してあの宿屋へ帰ってよ、それからこっちへ来る人があったから、その人のお伴をして連れて来てもらうまでの話はなかなか長いんだ」
「わたしだってお前、ずいぶん苦労をして死にかけたことが二度も三度もあったのよ。それでもムクがいてくれたり、また親切な人に助けられたりして、今ではお前、このお屋敷でずいぶん出世……をしているのよ。その間だって、友さんのことを心配していない日と言ってはありゃしない、どうかしてわたしの居所を知らせたいと思って、手紙を書いてもらって二度ばかり、両国のあの宿屋へ沙汰をしたけれども、さっぱりその返事がないから、わたしはどうしようかと思っていた」
「あれからの俺らというものは、あの宿屋にばかりいたんじゃあねえのだ。まあ追々ゆっくり話すよ、こうして会ってみりゃあ文句はねえのだが。そりゃあそうと気の毒なのはこの人だ、どこのどういう人だか知らねえが、口がまるきり利けねえのだ。ムクが案内するから俺らが天満宮の後ろの森の洞穴の中から見つけ出して来たんだ、途中で冷たくなったから死ぬんじゃあねえかと心配して、俺らが急所へ活を入れてやって来たおかげで、どうやら持ち直した、この分なら生命は取留めるだろう。口が利けるようになりさえすれば占めたものだが」
「明日になったらお医者さんを呼んで上げましょう、今夜のところは寒くないようにして上げておいて……友さん、もう遅いからお前さんもここへお寝なさい、わたしも部屋へ帰って休みます、また明日ゆっくり話をしましょうよ、明日と限ったことはない、いつでもこれからは一緒にいて、あんまり離れて苦労しないことにしましょうよ」


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