中里介山 『大菩薩峠』 「神尾主膳はおれに向って、駒井能登守とやら…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「神尾主膳が俺に駒井能登守を討てって言うけど、俺に神尾の頼みを聞く義理も駒井能登守を討つ恨みもない。俺は人を斬りたいから斬るんだ。人を斬らなきゃ生きていけないんだ――百人までは絶対斬る。百人斬った後もまた百人斬る。強い人じゃなくても斬ってみたいし、女だって斬る。ああ、甲府は狭い。江戸に行って思いっきり人を斬ってみたい。ああ、人を斬った時の気持ちったら。目の前に世界が広がるような気分だ。助けてくれって叫んでる奴をスバっと斬ると、胸がスーッとする。たまんねえ」
「今日もまた斬った。女だ。正真正銘、女が助けてくれって泣いてた。若かったか年を取ってたかは知らない。美人だったかブスだったかも知らない。若ければどうなんだ、美しければどうなんだ。俺はただ斬ればいいんだ。斬れば胸が透くんだ。声を頼りに斬ったら、泣きついてきたからまた斬った。そしたらこの腕が俺の羽織にしがみついて残った」
「前は強い奴しか斬りたくなかった。やりがいがある奴じゃないと興味なかった。でも最近は弱い奴を斬ってみたい。助けてくれって泣いてる奴を斬るのが好きになった。ああ、喉が渇くほど人を斬りたい。あの幸内って奴は逃げたんだって?長持に入ってたやつも逃げたんだって?せめてあいつらがいれば斬れたのに。一人じゃ足りない。なんで今日はこんなに人を斬りたいんだろう」
「ああ、甲府は狭い。一晩で二人も人を斬れない。江戸に行きたい。江戸に行けば、好きなように人を斬れるんだ――今日は斬っても明日は遠慮しなきゃいけない。甲府にはいられない。江戸に行く方法はないかな?江戸に行って思う存分人を斬らなきゃ、俺は生きていけないんだ」

原文 (会話文抽出)

「神尾主膳はおれに向って、駒井能登守とやらを討ってくれという、神尾の頼みを聞いてやらにゃならぬ義理もなければ、駒井能登守を討たにゃならぬ怨みもない、おれは人を斬りたいから斬るのだ、人を斬らねばおれは生きていられないのだ――百人まではきっと斬る、百人斬った上は、また百人斬る、おれは強い人を斬ってみたいのじゃない、弱い奴も斬ってみたいのだ、男も斬ってみたいが、女も斬る、ああ甲府は狭い、江戸へ出たい、江戸へ出て思うさまに人が斬ってみたいわい。ああ、人を斬った心持、その時ばかりが眼のあいたような心持だわい。助けてくれと悲鳴を揚げるのをズンと斬る、ああ胸が透く、たまらぬ」
「今宵もこれで斬った。女だ、まさしく女の声で助けてくれと泣いた。若い女であったか、年を取っていたか、そりゃわからぬ。綺麗な面をしていたか、醜い面をしていたか、それもわからぬ。若い女であったら何とする、また美しい女であったら何とする、おれはただ斬ればよいのだ、斬りさえすれば胸が透くのだわい。声をしるべに斬った途端に、縋りついて泣いたからまた斬った、それでこの片腕がおれの羽織にしがみついたなりに残った」
「以前は強い奴でなければ斬りたくなかった、手ごたえのある奴でなければ斬ってみようと思わなかった、このごろになっては、弱い奴を斬ってみたい、助けてくれと泣く奴を斬るのが好きになったわい。ああ、咽喉が乾くように人が斬りたい。あの幸内とやらは逃げたそうな、長持の中の窮命人は逃げたそうな、せめて彼でもいたら斬ってみたい、一人では斬り足らぬ。どうしてまた、今宵はこれほどに人が斬りたいのだ」
「ああ、甲府は狭い、一夜のうちに二人と人が斬れぬ、江戸へ出たい、江戸へ出れば、好みの人間を好むように斬ることができるのだ――今宵斬れば明日の晩は遠慮せにゃならぬ。甲府の土地にはおられぬ、江戸へ出る工夫はないか。江戸へ出て思うままに人を斬らねば、おれは生きてはおられぬのだ」


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